踵鳴らして踊りましょ 水かさがどんどんと増していく中、スモーカーは取りあえずなるべく水にかからないように座りながら、考えていた。 あのクロコダイルと例の犯罪組織の関係。こりゃぁ、大事になりそうだ。と周りがぎゃーぎゃー騒ぐ中、思っていると、ふと、嫌な予感が過ぎった。 「あいつ・・・馬鹿な事してないと良いがな・・・。」 だが、残念なことにシルフィンが馬鹿なことをする予感が外れたことは、一度もない。 「・・・・・・。」 溜息と共にゆっくりと吐きだした煙は何時もと同じ白色をしていた。 * * * 扉を開けたら、そこは鰐でした。何だっけこれ、たしかバナナがついた鰐・・・なんとか鰐。バナナワニだっけ?そんな安易なネーミングだっけ? そんなことを考えていると、目の前でお兄さんが、見事なまでの良い蹴りをワニにお見舞いして、ぶっ倒している。 それを横目に、水で浮かんでしまった本や書類をぱらぱらと捲る。横の檻で何か言っているが、気にせず捲る。 何故か飛んできた蹴りも、後ろにワニさんが居たのだろう。軽く避けながら目当ての物を探す。 「私室にも、ここにも・・・結構溜め込んでたんだな・・・。」 ええ、私は大いに助かりましたけど。 だけれども、なぜだか途中からこっちに蹴りが飛んでくる割合が高くないか? まぁいいや、用はもう済んだし。そう思って、崩れている階段を上ろうとした瞬間、後ろから呼び止める声がした。 「麦わら・・・?」 「おい!!待てよ、ワニ!!!」 「・・・・・・?」 そうでした。私、今王下七武海のクロコダイルさんでした。(某ピンク曰く“クロコちゃん”) あー、理解しましたよ。クロコダイルさん、麦わら達を捕まえたんですね。だからお兄さんが私の方に攻撃してたんだ。今の現状を把握し終わった私に、麦わらがしびれを切らしてまた叫ぶ。 「ワニ!!おれはてめぇをぶっ飛ばす!!!」 そう言われたので、何か言い返さなくてはと、取りあえず鼻で笑っておく。そして適当に返事を返そうとして、若干戸惑いながらも口を開いた。いきなりだったので、戸惑うのは仕方がない。でも、顔は会議で会って覚えているし、声も変声機で何とかなる。でもさ・・・。 「殺されたいのか・・・麦わら・・・。」 口調、そこまで覚えていないんですー!!! ドフ・・・いや、某ピンクと言い争っているときのを必死に思い出しながら、私は台詞を紡ぐ。 「おれは雑魚の相手はしねぇ主義でな・・・。」 知りません、実は相手にするかもしれません。勝手なこと言ってます。それでも冷静に、マフィアっぽく、七武海の貫禄(?)をみせながら、若干スモーカーさんみたいに怖く恐く行けば、何とかなる! そう信じて、麦わらを睨み付けようとした瞬間、後ろの人と目があった。 「なんで来た、“クロコダイル”・・・。」 そう言われ相手を確認した瞬間、うわぁぁあぁあ!!!!!!と叫びたくなったけれど、頑張ってそれを堪える。 だけど、偽の葉巻をくわえていた口が、動揺のためか、それを落としそうになる。 「す・・・すもっ・・・あー・・・・・・・・・枯らすぞ。」 「なんでいきなりそうなった!?」 誤魔化すために言った台詞も、男(ヤソップさんに似てる・・・。)に突っ込まれた。だからいきなりの侵入は嫌なんだ。 「おれは、気に入らなければ枯らす・・・そう言う主義だ・・・。」 知りません、本当にそんな主義を持っているかは知りません。本当にごめんなさい。ちょっと内心涙目だし、帰りたいし。心臓がバクバクいってるし。でも、私は役者。 「てめぇ等雑魚に、言われる筋合いは、ねぇよなぁ?」 見下しながら、私は台詞を呟いた。舞台から降りるまでは、私はシルフィンじゃない。“クロコダイル”だ。 「まぁ、せいぜい足掻くこったな。」 舞台の上ではどんな状況でも、必死に役を演じてみようじゃないか。今言った台詞を自分の中で繰り返し、不安げに見つめる青い髪の彼女に嘲笑いながら、私はそう思った。 舞台で踊る不格好なワニ 「ぷはーっ!!生き返った!!」 そう言って聞こえるのは、いきなりどこかから出てきた男。 「フフフ・・・!クロコダイルめ、私を仕留めた気でいるだろうが・・・えー!?まだ居るガネ!!!」 ・・・あんた、誰ですか。 何でだとか騒いでいる変な人を見て、さっきの意志がもう挫けそうだ・・・と思い、顔をしかめた。 back |