希望 「・・・・・・。」 「・・・・・・。」 私も女の子も無言だったけれども、しばらくしてから、私が口を開いた。 どうやらこの子は大人しい子みたいで、ぽつぽつと話し始める。 「私はシルフィンって言うんだけど、キミは誰?そして、ここは何処?」 「わたしは、イヴ。ここは・・・。」 そう言ってイヴちゃんは、こちらをじっと見る。どうやら、彼女もここが何処か分からないらしい。 「えっと、美術館にいたら暗くなって、絵に飛び込んだ、と。・・・そして像が動いて、絵が喋る。」 そう簡単に整理するとイヴちゃんがこくこくと頷いている。それを見て、正直目眩がした。 同じような境遇の子が居たのは心強いけど・・・とか思っていると、ふと目に付いたのは灰色の花瓶。 「グリーンローズ・・・。」 花が一輪だけ入っている灰色の花瓶を見つめていると、それに気が付いたイヴちゃんが、目の前に赤い薔薇を差し出してきた。 「シルフィンさん、これ、わたしが始めて居た部屋にあったの。」 なんかその言い方だと、これを取らないといけないのか?と思い、口を開く。 「・・・取るの?」 「たぶん。」 正直取りたくなかったが、仕方がないので取ることにした。 「ちょっと元気が無いよなぁ・・・。」 花瓶から取ってちゃんと見てみると、若干元気がない。どうしようか考えてから、どうせ花瓶に入っていたんだから。と思い、ポケットに入っていたハサミで茎を斜めに切って生ける。 「うわぁ。」 その瞬間で急に元気になったのを見て、私はまた目眩がした。(おまけに水が全て消えているし。) 「本当に一体何なのさ・・・。」 勘弁してくれ。そう思いながら、イヴちゃんとこれからどうしようかと、話をすることにした。 "結局、進むしかない"と言う結論になり、取りあえず周りを散策(冒険)する事に。 「シルフィンさん、見て見て『猛唇注意!!』」 「あー・・・うん。そんな言葉、初めて聞いたよ。」 と言うか、そんな風に唇が単体で注意されることなんてまず無いだろ。 「・・・じゃぁ、唇には近づかないようにしようか。」 そう言った後、彼女の足のペースに合わせる為に、ゆっくり歩き始める。 「そう言えばさ、イヴちゃんは家族と美術館に来たの?」 「うん。シルフィンさんは?」 「え。私?」 ・・・言えない。タダで入りましたって。 「1人で来たかなぁー。っと、そうだ。」 そう言って、後ろからトテトテ歩いてきていた彼女と向き合う。 「『シルフィンさん』って言い方じゃなくて、ただのシルフィンで良いよ。」 「え・・・うん!じゃぁ、シルフィンもイヴって呼んで欲しいな。」 そう小さく笑った目の前のこの子。凄く可愛いです。 何かもう、この子がいれば大丈夫な気がしてきた。 「分かった、イヴ。これから宜しく。」 「宜しくお願いします。」 ぺこりとお辞儀をしてくれる彼女を見て、口元が緩むのを感じながら、イヴの目の前に左手を出す。この子と一緒にここを脱出しよう。そんな決意を胸に私はそう呟いて笑った。 「行こうか。」 イヴから差し出された小さな手は、とても温かかった。 ガーベラの首飾り 「・・・今気が付いたけど、この部屋、どうなってるんだ・・・。」 私がいた近くにはベロベロ動く舌。そして、廊下を歩くと壁から手(?)が出てくる。 「今まで来た道も、こんな感じだったよ?」 「へ・・・へぇ。」 子供って無邪気なのか、それともこの子が強いのか。どっちか分からないけれど、凄いなぁ・・・と思ってしまった。 back |