花言葉を込めて | ナノ


パンプキンタルトは愉快犯


「シルフィン、持ってないの?」
「女性が全員持っているなんて大間違いですよー。」
「うっそ!本当に!?」
「本当、です。」

なんだか、自分の性別を疑いたくなりました。何かもう、誰か助けてください。


今日はイヴとギャリーと一緒に3人で買い物に行きました。でも途中でイヴが家の用事とかで、居なくなってしまいました。私達2人は3時のおやつにと、ケーキを近くのお店で食べることにしました。何故だか物語のようにゆっくりと頭で今までのことを再生し、信じられないと呟くギャリーさんをチラ見して、また明日の方向へ視線を戻す。
困ったな。と思う。でも。

「別に、鏡が無くったって困らない。」
「それがいけないんだってば!シルフィン分かる!?」

でも、本当に所持品に鏡なんて要らないと思うんだ。そう言うと、「シルフィン。」とこちらをじっと見てきた。

「でもギャリーだって、鏡持ってないし。」
「アタシはいいの。」
「そう言うのいけないんですよー。」
「シルフィン。鏡はね、女の子の身だしなみを整えるためにあるんだから。」

ギャリーだって、と呟けば、「シルフィン。」とまたこちらを見てきた。    

「さっきから何?」

そう聞けば、どこかのモデルさんの様に肘を付いて笑っているギャリーが目の前にいた。

「鏡がないと、口に付いたのも見えないでしょ?」
「!!」

慌てて私は先程まで食べていたケーキを見て、フォークを持っていない手で近くにあったナプキンを取り、拭いた。

「ギャリー、取れた?」
「シルフィン、鏡がないと本当に不便ねー。」

もうちょっと上よ。と言われ、私はもう少し上を軽く拭いてみる。そんな行動を見て、ギャリーはまたニヤニヤ笑っている。(何時付いたかは知らないけれど、早めに言って欲しかった。)

「何。」
「シルフィン。目、つぶってくれる?」

どうせ、まだ取れていないのだろう。初めから、こうしてくれれば良かったのに。とか思いながら、目を閉じる。 ギャリーの手が軽く私の頬を触る。そんなことをしたら、手に付くよ。と、言おうとした瞬間。 次に来た感覚は、あのちょっと固めの紙の感触ではなくて。

「!!・・・ちょっ、ちょっとギャリー!?」

驚いて目を開けば、閉じる前と同じように笑っているギャリーが居た。

「本当に騙されやすいのねぇ、と言うか危機感ゼロ?アタシ、シルフィンが心配だわ。」

ニッコリと、そう言って笑うギャリー。(きっと、本心は楽しんでる。むしろ、またやろうって思っているに違いない。)今度からは、ちゃんと鏡を持とう。頬を手で押さえ、ニコニコと笑うギャリーを視界から外しながら、そう思った。


パンプキンタルトは愉快犯



「・・・嘘吐き。しかも人前で。」

ぼそぼと真っ赤な顔で呟いているシルフィンを見て、嫌われたかもしれないと思っていたアタシは内心ホッとした。 元々、顔に何も付いて無かった。初めはほんの冗談のつもりだった。

「大丈夫よ、シルフィンが大騒ぎしなきゃ、誰も気づかないわ。」
「ギャ「しーっ。」分かった。」

でも何かが押さえきれなかった。でも、アタシはアンタも悪いと思うの。

「ねぇ、シルフィン。アタシシルフィンのこと、好きよ。」

だってこうでもしないと、アタシの気持ち、分かってくれないでしょ?  軽くシルフィンの頬を触りながら、アタシはシルフィンにゆっくりとまた笑いかけた。



title by 21グラムの世界

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