移り気と人は言うけど 「あ、紫陽花だ。」 そう言ってシルフィンが止まったので、アタシも同じように止まる。傘を軽く傾けてシルフィンが居る方を見れば、紫陽花が群生している。 「あら、ほんと。・・・綺麗ね。」 「何か紫陽花見ると、あー6月だ、梅雨だー・・・って思わない?」 「アタシは雨の日が多くなると、あー梅雨が来たって思うわ。」 まぁ確かにそうなんだけど・・・と不服そうにそう言うシルフィンに苦笑してしまう。 「だって湿気が多くて、アタシの髪の毛がうねるんだもの。」 「ギャリーの場合、もう既にうねって・・・すいませんでした。」 シルフィンを睨めばそう返ってくる返事。これはお洒落なんだから!と言えば、「女子力高いよね。」と言われる。そう思うんだったら、アンタ、もう少し頑張りなさいよ・・・と言ってやれば、苦笑いで返された。そうしてたら紫陽花の花言葉の話になって。“移り気”が有名だけど、“辛抱強い愛情”も花言葉にあるんですよー。と言いながら、水溜まりを避ける。 「へぇーそうなの。」 「素敵でしょ?」 「素敵ね。」 「女子力高いでしょ?」 「そうね・・・ってシルフィン、なんでいきなりその話になるの。」 ぽつぽつと歩いていたのに、急にそこでギャリーの足が止まってしまう。 「え、だってギャリーが『女子力あげなさい』って言うから?」 「べつにそうは言ってないけど。」 「でも『もう少し頑張れ』って。」 「・・・確かにそれは言ったかも。」 でも何で急にその話になるのよ。と言われたので、なんて言おうかと考える。 「あー・・・っとですね、ギャリー。」 「ええ。」 「・・・実は私、紫陽花になろうかと思って。」 「・・・・・・・・・ごめんシルフィン。アンタ、頭大丈夫?」 「あー・・・いや、だからさ。」 急に周りの空気が冷え込んだ気がする。・・・何となくその理由が分かってしまい、少し俯きながら、ぽつりと小さく呟いた。 「紫陽花みたいに、好きな人の好きな色に色を変えられたらなぁ・・・なーんて。」 「・・・・・・・・・。」 沈黙に耐えきれなかった私は「あーその、ごめん。」と言って、バシャバシャと音を立てながら歩き始める。 「ちょっと、シルフィン!!」 そう言って腕を捕まれたときにふと見えてしまった彼の顔の色は、私と同じ色でした。 ただ貴方色に染まりたいだけ (ギャリー・・・顔真っ赤ー。) (五月蝿いわね!!アンタもでしょうが!!) back |