花言葉を込めて | ナノ


驚き


なんとか手に入れた鍵を使って入った部屋には、窓がありました。

「窓、かー・・・。」

外に出られそうかな。なんて思いながら、窓の方へと足を進めていく。

「あ・・・シルフィン・・・。」

窓に手が届きそうになるぐらいまで近づいたときにイヴが私に声を掛けた。ん、何?と聞いた返事が、結構衝撃的だった。

「あのね、ここに来る前に窓をばんばん叩かれたから、気をつけてねって・・・。」
「・・・窓?」
「うん。」

ばんばん?と聞くと、また「うん。」と答えてくれる。 それを聞いて、私は窓から一歩離れる。・・・そう言われてしまえば、希望に見えた窓も、怖い対象に見えてくる。窓の景色は真っ暗で。こんな所でばんばんされたら・・・怖い。もう一度大事なことなので言っておきます。 怖 い で す 。

「・・・ギャリー・・・あのさ、ごめん。」
「何よ。・・・もしかしてアンタ、何か変なボタンでも押したの!?」
「いや、そんなボタンあっても押したくない。ってそう言う事じゃ無くて、窓・・・なんとかしてくれないかな。」

シルフィン、アンタ。もしかして怖いの?と聞かれれば、私は黙って頷く。だって怖いじゃないか。そんなこと言われてしまったら。 理由を説明すれば、ギャリーも何か思ったことがあったのだろう。少し嫌そうな顔をして窓を一瞥した後、「分かったわ。」と呟いた。

「じゃぁどうしようかしら・・・ん?あら、ここの本棚動きそうね。」 
「あ、じゃぁお願いしまーす。」

ばんばん叩かれても、その光景を見ないように…先手は打っておくべきだと思う。
そう言って動かして貰っている途中、横の方から何か呟くようなイヴの声が聞こえた。

「どうしたの、イヴ。」
「ギャリー・・・シルフィンこの絵・・・。」

そう言われ、目の前の大きな絵画に視線を向ける。お父さんとお母さんなの。と呟いたその絵の題名は『ふたり』。イヴは母親似なのかと思いながら、イヴに視線を戻す。今にも震えだしそうな彼女の様子に、何となく見ていられなくて、顔を軽く背けてしまう。

「ねぇ、ギャリー。」
「また何よ。」
「もう、ここ出ない?何もなさそうだし。」
「・・・ええ、そうね。」

ギャリーも私の言いたいことに気がついたらしい。ここにいたら、イヴが辛いだけだ。そう判断したギャリーの行動は早くて、イヴに「行きましょ?」と言って、扉の方へと歩いていた。でも私達は忘れていた。ここは警備の厳しい美術館だと言うことに。

「・・・オートロックが憎い。」
「ギャリー・・・。ここのオートロックが異常なんだから。」
「・・・いや、知ってるけど・・・。」
「・・・・・・・。」

少し俯いてしまっているイヴの横でモデルさんのように綺麗に座っているギャリーを見ながら、そう答える。現在の状況はというと、見事に外に出られない状況。扉に鍵が掛かっているのか外に出られない。と言うかギャリー・・・実は結構気分的に余裕なんですか、私だったら怪しいソファーなんかには座れないです。

「まぁ・・・オートロックは良いとして、アタシ、ちょっと心配なのよね。」
「何が?」
「警備員が来そう。だってアタシ達、今、袋の鼠状態なんだから。」
「・・・出られないって事?」
「そう言う事よ、イヴ。」
「・・・でもアレなんでしょ?イヴによれば、あの人達は扉を開けられないらしいじゃん。」

あとギャリーさん。私も今、警備員なんで。一緒にされるのはちょっと・・・。と呟けば、「あら、ごめんなさい。」と返事をされる。 まぁ、いいんですけど。と呟きながら、これから本当にどうしようか。と考えてしまう。近くにあった壁にもたれながら、ちょっと休憩したらまた探そう。そう思いながら、また壁に体重を預ける。そうしていると、ドンドンと音が聞こえる。・・・扉からも、だ。

「な・・・なに、この音・・・・外から!?」

私は急いで体重を預けていた壁から立ち上がる。・・・嫌な予感しかしない。

「ドアの前に、誰か居るわ。注意してイヴ、シルフィン!!」
「分かってますって・・・!!」
「・・・・・・・。」

そう言ってギャリー達の所へ行こうとした瞬間、私の居たすぐ隣の壁から、何かメキメキと音がし始める。 ほんと、嫌な予感しかしない。こう言う時って、ほんと声が出ないもんなんだね。とか、別のことを考えるしかできなかった。


飛び出てきた土筆 


「っか、壁から出てくるなんて、聞いてないわよ!!」
「・・・窓も割るような人だからね、絵画の君は。・・・恋する乙女はアグレッシブだね、ほんと。」
「アグレッシブすぎるわよ!!!」

まぁ、確かに。私も壁をぶち破るなんて思わなかったけれど。ぶち破った穴から、入ってくる絵画の君。 もう、あの穴から逃げるしかない。それしかない。そう思って、私達は足を動かし始めた。

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