花言葉を込めて | ナノ


貴方を見つめる


もう容量オーバーだ。もうやだ、つらい、帰りたい、怖い、こわい。目の前のマネキン2号達を睨み付けながら、口から気持ちが出ていかないよう唇の裏をこっそり噛む。残りの2人は、私みたいに弱音を吐いていない。 もっと・・・強くならないと。イヴやギャリーに迷惑をかけてばっかりだから。

「自分も・・・しっかりしないと。」

2人に聞こえないくらいの声で呟いて、私はイヴ達の後ろを付いていった。

「で・・・結局こうなるんですよね!!!」
「まぁ、お決まりといえば・・・お決まりよね、嫌だけど!!」

そりゃぁ、私だって嫌だよ!そう叫びたいのを我慢しながら、足を必死に動かして周りを見回す。イヴの手をしっかり握りしめながら、取りあえずあいつ等の見えない所まで走って、息を整える。

「扉、開かなかった・・・ということは、鍵があるのかな?」

そうイヴに言われ、苦虫をすりつぶしすぎた様な顔をしているであろう私は、小さく呻いた。

「ま、また鍵を探すのか・・・。」

正直辛いな。と思っていたのは他の2人も同じようで。ずーんと重たい空気が広がる。
ここは鍵をかける部屋が多すぎ。・・・美術館としては失格、かな。と、この空気を払うように冗談を言ってみれば、2人に苦笑される。

「シルフィン。普通の家でも失格よ、これは。」
「うーん・・・そうだけど。」

確かに、家の中で鍵をかけるのはいささか・・・。まぁ、私が不用心なだけかもしれないが。

「でも・・・警備の人が居るんだから、仕方ないのかも。ここの人、用心深いんだよ。」

そう呟いたイヴに、「?」と私とギャリーは首を傾げる。

「ほら・・・警備の人。」

そう言って指さすのは、柱の影から見えるマネ・・・違う、無個性さん。

「あぁ、なるほど・・・。」

さしずめ、絵画の君も警備の人・・・になるのだろう。(あ、何か言い方格好いい)3人で顔を見合わせた後、見つからないように気を付けながら静かに笑いあった。

「・・・・・・。」
「・・・・・・ ・・・・・・。」    
「・・・・・・。」
その後、皆目が死んだようになりながら、ぐるぐると部屋の中を回る。
これが、歩いてだったら良かったんだけれど・・・。

「もしもしギャリーさん?」
「・・・何かしらシルフィンさん。」
「貴方の追っかけが増えてますよ。」

イケメンって大変ですねぇ・・・と、さして羨ましくなさそうに呟く。後ろをちらりと振り向けば、美術品が追ってきている。(うっ、見るんじゃなかった・・・)

「あのしかけ、解いたから・・・不味かったのかも・・・。」

途切れ途切れにそう呟くイヴ。息が切れている割に、心なしか顔が青くなっている。あの仕掛け、というのは花瓶をキャンパスの前に動かしたこと。

「でも、もうやっちゃったことだから、仕方がないよ。」

シルフィンがそう呟きながら、紙に線を書き入れていく。なんでそんなことしているのか、ですって?

「女の数・・・なんて、こんな状態じゃわかる分けないでしょ!!」

誰に言うでもなく、叫んでみる。・・・後ろはいきなり叫んだのにも関わらず、何もなかったように追ってくる。

「もしもし、ギャリーさん、ギャリーさん。」
「・・・なに、シルフィン。」

あれって、適当に数を入力したらダメですか?と紙にまた線を書き足しながら、そう呟く。

「その間に、アタシの追っかけに捕まらないと良いわね。」
「うえ・・・やっぱやめておきます。」

そう言いながら、シルフィンは足下にあったマネキン(?)を避けながら、また走り出した。・・・そう言えば、こんな所にこんなマネキンあったかしら。 ギャリーがそう思いながらマネキンのほうを見ると、お互いの目があった気がした。

「・・・・・・。」
見るんじゃなかったわ・・・。


鏡に映った向日葵


「・・・鏡よ鏡よ鏡さん・・・世界で一番怖い美術館はどーこだ。」
「・・・シルフィン。アンタ、結構余裕なの?」

しばらく調べていると鏡の部屋に行けて、私達はゆっくり休憩していた。

「少し体力戻ったので・・・!?」

そう言って後ろを向くと、見知らぬ第三者(?)が入口に立っていた。



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