最果てへの逃避行 「お前は旅行するんだったら、何処に行きたい?」 「なんで?」 「2人で旅行するなら、何処に行きたい?」 もうすぐ全てが改造されてしまうと知っているから、逃げないか、2人で。笑っているのだろうその顔は高さと帽子のせいで上手く見えない。 「・・・くまの好きなようにどうぞ。」 くまの言いたいことはよく解っていたが、それがホントに正しいのか、本当にくまがそれを望んでいるのか解らなくて曖昧に答える。選択肢なんて本当は要らなかった。 攫っていって欲しかった。 「・・・そうか。」 その答えにすこし寂しく思ったのは事実。 「くまとなら、どこだっていいのに・・・」 呟いた小さい声は貴方に聞こえていたのだろうか。聞かない事にしたのか、聞こえなかったのか解らなかったけれど。 愛している、と言えば良かったのだろうか。それとも、一緒に逃げようと言えば良かったのだろうか。もう既に自身で考えることを止めてしまった男に呟く。 「愛していました・・・」 泣きながら訴える私を、ロボットになってしまった貴方はただ見つめるだけ。 「好きだったの・・・」 既にココロが死んでしまった貴方へのラブコール。届かないと知っているけれども、それでもなお私は貴方を、 「ねぇ、PXー0。 貴方、旅行するなら何処に行きたい?」 彼から最後に受け取った聖書をまた一枚めくり、書き殴られた彼の字を指でなぞる。 (汝、隣人を愛せよ) それがもう人でない貴方にも有効かどうかなんて知らないが。 「まだ、間に合うかしら。」 これから愛の逃避行、なんて笑えちゃう。あの時あの人の手を掴めなかった癖に、今度は自分から差し出している。 「2人で、この世の終わりにでも旅行しませんか。」 返事は要らない。 今度は私が攫っていく。答えは以前もう既に貰っているから。 掴み損ねた腕は、目の前に back ・ top |