とある暑い日 「あっつー・・・」 夏の甲板の上はあつい。そりゃあもう、地獄かというほどに熱い。日陰でも海の光が反射して、蒸発した水蒸気で蒸れるような暑さだ。 「おう、あっちーよな。」 能力がメラメラという炎属性を持つ彼でさえ、この夏の暑さには耐えかねるようで、先程からひたすら隣でうだっている。 「近寄らないでよ、なんか熱い気がするから。」 「ばーか、お前、人肌のほうがこういう時冷たいんだぜ?」 ほら、と差し出された腕はやはり甲板のそれよりはひやりと冷たい。それに酷く変な気分になった。 「ちべたい・・・」 「だろ? お前の掌、あっちーな!」 「エースは炎だから、なんか腕でも冷たいと変な感じ。」 そう笑えば、エースはむくれて反論する。 「俺だってなぁ、能力使わなきゃ、他の人間と同じなんだぜ?」 「炎使うんだったら、離れて。」 めら、と炎を指先で扱おうとした男を、酷く冷めた目で制止する。 「わーかった、冗談だって。 俺だって熱いのやだし。」 ぺたり、ぺたり。 涼しさを求めるように、冷たい部分をさがして手を移動させる。すぐ掌の温度に慣れて、ぬるくなった部分からまた冷たい場所に。 「おい、それだと俺だけ熱いんだけど。」 「エースが触ったら絶対に熱いからやだ。」 自分の掌だって熱いのは知っている、でもそれよりきっとエースの掌の方が熱い気がする。 「お前な・・・ずりぃ事してんじゃねーよ!」 俺だって、熱いんだよ!と隣でごねるエースに腕を差し出す。 「少しだけだよ?」 そういえば、ぱぁっと顔を明るくしてすりよる頬。 「やだ、馬鹿・・・顔は熱いからやだって・・・!!」 「ちょっとだけ、なんだろ?」 なら、思い切り涼みたいんだよ、と末っ子ならではの我が儘。その屈託のない微笑みに絆されているものの、熱いものは熱い。熱でも伝染したのか、自分の頬もなんだか熱い気がしてきた。 「エース、いい加減に・・・っ、」 「ナマエの腕、やらかくて、つめたくて、きもちぃー・・・」 そんなエースをみれば、もう離してなんて言えなくなって。それがいけなかったのか、エースは数分たってもそこから顔を離そうとしない。 「もう、ぬるいでしょ?」 「ぬりぃよ? でも、離したくないんだ。」 「もう、いい加減熱いんだけど。」 本当はこの腕の熱さにもそろそろ慣れてきていたのだが。 「だって、夏はあんまり俺の近く来ないだろ、お前。」 「・・・、否定はしませんけど。」 「だから、俺からくっつかないとな!」 完全に私の負けだ、と目を閉じれば、エースは豪快に笑う。 「まぁ、どうしても熱いっていうなら仕方ねーな。」 「熱いけど、仕方ないでしょ。」 「まぁな。我慢してくれ。」 「冬はその分、冷たい足くっつけてやるから覚悟しなさいよ。」 「おう!」 とある夏のあつい日 「甲板でいちゃつくなぃ! お前らの所為で気温さらに2度くらい上がってる気がするんだよぃ!!」 「「ごめんね?」」 そういって笑いあった二人に一番隊隊長からの愛の鉄拳があったとか、ないとか。 back ・ top |