合コンしようぜ!

※霧崎スタメン成人済み大学生設定

ザワザワ騒がしくタバコとアルコールのの匂いが充満する店内に居た。
大学に入って2年目の冬。大学生になってからというもの高校生より忙しい生活を送っていた。毎日、講義にレポートに追われる日々。遊びに出かけるものの何かが足りない、潤いがない。そうは思ってはいた。この間、飲みに行ったとき「オレらに足りないもの…色恋だよ!彼女欲しくね!?」と原が言い放ち、その一言により合コンが開催されることになった。実際、元霧崎バスケ部スタメンの中で彼女持ちは誰一人としていない。別に彼女なんかいなくても死ぬわけではないし羨ましくもなんともないが、たまに街中でイチャつくカップルを見て「リア充死ねよ」と言う辺り心のどこかで疎ましく思うんだろう。そんなわけで原が昔の女友達を誘い5対5の合コンを行うことにした。

「(ちょ、可愛いのばっかじゃん!原スゲーの呼んできたな!)」
「(はぁ?フザケんなブスばっかじゃねぇか。原、死ね。)」
「(ぼったくられたりしないよな?キャバ嬢みたいなのばっかりだなー。)」
「(俺はもう少し清楚な女子がいんだけどな…)」

「この子がオレの友達ちゃんね♪んで、その友達の友達のカワイコちゃん達。」

「よろしくね〜★」

原の連れてきた女は全員水商売でもしているかのような本当に大学生かと疑えるような見た目が派手な女ばかりだった。お前ら年齢偽ってるんじゃないか?そんな中、明らかに彼女たちとは少し系統が違うのが一人混じっていた。

「そっちの子は名前なにー?」

「んー?私ー?あ、ななしでーす。よろしくねん。」

栗色のふわふわミディアムな髪、小柄で子犬のような風貌の女の子。

「じゃあ始めよっか。席予約しといたし、飲み放題だし、楽しもーね。」

こうして合コンが始まった。花宮を含め5人は合コンは初めてではない。今まで何度か経験はしていた。だが、いずれも上手くいったことがなかったのだ。「今日こそ成功させてお持ち帰りしてー!」と原は意気込んでいた。「とりあえず彼女欲しい」と山崎も零した。「乾杯」で始まるとみんな次々飲み始め軽く酔いが回ってきた。

「どういう男がタイプなワケ?あ、ちなみにオレ、イイ男だよん。彼氏にするには持って来いだし♪」

「えー、ノリ軽そ〜。浮気とかしそーだよね!」

「しねーって。一途だし♪」

「花宮君はどういう子が好きなの〜?」

「好きになった子がタイプかな。(てめぇなんて眼中にねぇんだよバカが化粧と香水くせぇよ死ねよ。)」

「アタシ結構、古橋君好みかも!」

「すまない、断る。」

「アホかてめぇ!」

「山崎君?ザキ君でいいかなぁ?あたし好みかも〜。」

「マジで!?」

「瀬戸君眠いの?膝枕してあげよっか?」

「俺あんまり金持ってないよ。サービス料取るんだろ。」

「やだぁ!タダに決まってんじゃん!可愛い〜!」

酒が入っているせいかテンションがいつもより上がりそこそこ盛り上がってきた。原は一気に3人相手にするし、山崎も1人に気に入られ会話が盛り上がっているようだ。瀬戸は酒のせいで眠そうでウトウトしていた。そんな中、飲み始めた時から全く相手にしていなかった女子が居た。ななし、と名乗った子犬みたいな女子だ。会話に参加することなく一人もぐもぐ料理を貪り酒をグイグイ飲んでいた。

「ねぇ、君さっきからハムスターみたいに食べてばっかりだけど合コン参加しなくていいの?」

花宮が作り笑顔で話しかけるとメニューから顔を上げて口の中の食べ物をゴクリと飲み込んだ。

「あ、私の事は気にしなくていいよ〜。」

「しかし、せっかく参加したんだからもっと楽しんだほうがいいと思うけど。」

古橋お前がそれ言えるセリフかよ、と花宮は内心で突っ込んだ。

「いいのいいの。私、人数合わせ要員だから〜。今日合コンに参加したら食べ放題飲み放題だって言われたし。あ、すみませぇぇん!つくねと皮とネギま一本ずつ追加で!タレは塩で!あと特製デカ焼きおにぎりとポテトサラダにマグロ三種盛りに生中追加で!」

「お前よく食って飲むよなぁ。つーか、マジで合コンする気ゼロなんだな。ふはっ、男いねぇだろ?」

「いないよーん。」

「欲しいと思わないのか?」

「うーん、よくわかんないや。」

まだジョッキに残っているアルコールを飲み干して一息ついてから言葉を口にした。

「みんな合コンで彼氏作る〜とか意気込んでたけど彼氏とか彼女とかって作ろうと思って出来るもんじゃないと思うんだよねぇ。なんていうか…お互い理解し合って自然に惹かれあってその中で好きになってじゃあ付き合おうかみたいな感じになるんでしょ?お酒とその場のテンションと勢いで一夜限り結ばれてもなぁ…と私は思うのです。」

花宮と古橋は目の前の彼女と考え方がなんとなく似ていると思った。あぁ、こういう子もいるんだな、と。男に媚と自分を売りつけてアピールするだけの女ばかりじゃなかった。

「だから合コンなんて柄じゃないし、どうでもいいのです。美味しいご飯とお酒が飲めればよし。」

そう言ってまた酒をグイグイ飲んでおつまみを口に運ぶ。

「…ふはっ、口のとこ、米粒付いてんぞ。」

「え、どこどこ。」

「お前色気ゼロだなぁ。そんなんじゃ男なんか到底出来ねぇぞ。そこじゃねぇよ、反対側だ。」

「でも、そういう抜けてるところは愛らしいと思う。取ってやるから動くなよ。」

「うぶぶっ。」

「はい、取れた。」

「ありがとー。」

「ほかの女共は男作るのに必死なのにお前は呑気じゃねぇか。」

「そういう君たちだって全然参加してないじゃないのよ。彼女欲しくないの?あっちの肉食系っぽい二人は凄く頑張ってるよー。」

「まぁ欲しくねぇっつったら嘘になるけどな。あんなケバいブス共を彼女にするくれぇなら独り身の方がマシだ。」

「まぁその…俺の好みの系統と違うからな…。」

「あらぁ、ワガママー。」

「まぁお前が彼女になってくれんなら話は別だけどな。」

「え。」

「お前のこと気に入った。お前も独り身なんだろ。だったら俺の彼女になんねぇ?可愛がってやるよ。」

「花宮は危険だ。俺なら危険な目には合わせたりしない。俺と付き合わないか?」

「はぁ?お前、女に興味なさそうなクセして何いってんだ。死んだ魚みてぇな目直してからにしろ。」

「フザケるな。興味ないわけないだろう。今日、まさに今。彼女にであって俺は変わったぞ。あと目つきは生まれつきだ。花宮こそ眉毛剃って出直してこい。」

「んだと!?」

花宮と古橋、二人共軽く酒が入っているせいかいつもと違って言い争いが始まった。そんな二人なんてお構いなしに原と山崎は女子との会話に盛り上がっていた。

「(うっぷ、流石に食べ過ぎ飲みすぎたなぁ。お腹苦しい…胃もたれがぁぁ。)」

「ふぁぁ…ねっむ。此処に居ると眠くなりそうだし帰ろ。」

「あれ、どっか気分でも悪いんですか。」

「眠いから眠気覚ましに夜風当たってくるってか、もう帰る。あんた顔色悪いけど大丈夫?」

「ちょっと食べ過ぎ飲みすぎで気持ち悪いのです…うっぷ。」

「じゃあ一緒に夜風当たる?そうすれば気分良くなるんじゃないの。」

「あ、じゃあご一緒させていただきますー。」

「んー。花宮ー、俺、先に帰るから参加費ここに置いて…聞いちゃいねぇ。まぁいいや。ここ置いとけば。」

「私も参加費ここに置いとくよ〜。って聞いちゃいない。完全に男の子しか見てないや。まぁいいか。」




「うっぷ…うぷっ。」

「大丈夫かよ。まぁあんだけ食べれば苦しくもなるか。」

「え、見てたんですか。」

「うん、まぁ割と。あの中で一番タイプだったから。」

「おおうっ。」

「食ってばっかで話に参加してないから合コン興味ないのかと思った。」

「まぁあんまり興味はないですね。」

「じゃあ俺に興味持つこともないの。」

「え!」

「付き合うとかそういうのじゃなくて、興味持ってくれるだけでもいいと思う。だってそっから繋がっていく関係もあるんだろ。少なくとも俺はあんたに興味あるし。」

「あ…あうっ…その…お、お友達からならっ。友達なら興味持てる…です。」

「ん、じゃあ今日から友達な。」

スッと差し出された手をギュッと握り返して交渉成立!


【翌日】

「クソッ…また失敗しやがった。もうしばらく合コンなんかやらねぇからな。結局あのななしとか言う女、途中からいなくなりやがったし。」

「花宮のせいだな。」

「はぁ?フザけんなよ古橋てめぇ。」

「あー、楽しかった。昨日あのあとお持ち帰りしたんだよねー。色々ヤッちゃったー。」

「俺は酔いつぶれた子介抱すんのに必死だったのに何一人だけイイコトしちゃってんだよてめー。」

「そういえば瀬戸も途中からいなかったが帰ったのか?」

「うん、ななしと一緒に帰って家まで送ってきた。」

「「はぁ!?」」

「健太郎てめっ…!俺が狙ってんの知ってて…フザけんじゃねぇよ!しかも家まで行ったのか!?早すぎんだろ!?」

「友達になったし家行くくらいいいだろ。」

「は?友達?彼女じゃなくて?」

「うん、友達。」

「彼女にしねぇの?合コン来てたんならあっちも彼氏欲しくて」

「友達。まだ友達。」

「…なんというか。良い関係が築けることを祈るよ。」

「おう、サンキュ。」

「クソッ、もうマジで合コンなんかやらねぇからな!」

次回合コン開催予定、未定。
ちなみに瀬戸は3ヶ月後、ななしと恋人になりましたとさ。


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