冷たい手・副会長×会長



 腹が痛い。調子が悪いからか一向にその痛みは止まず、つい眉間に皺を寄せてしまう。

「うぜえ、うぜえ、うぜえ!」

 さっさと書類を処理したかったのだがあまりの痛みに手が止まり、捗らない。他の役員に頼んで休めばいいのだろうがプライドがそれを許す事はなく。1人生徒会室に籠もっていた。だがこのままでは駄目だろう。このまま仕事を続けても捗る事はないだろうし、悪化しそうだ。

「しゃあねえ、寝るか」

 仮眠を取ればその間痛みを忘れられる。それに薬を飲んでおけば起きた頃には治まっているはずだ。

「仮眠室……」

 立とうとするが力が入らず、何だか仮眠室が遠くに感じる。まあ、別に横にならなくても大丈夫かと結論づけ机に突っ伏す。睡魔が襲いかかってくるのにそう時間は掛からないだろう。

 そう寝に入ろうとした時。ドアが開き誰かが入ってきた。鍵を掛けていたはずだから入ってきたのは他の役員だろう。

「……会長、どうしたんです?」

 どうかスルーしてくれと念じていたのだが意味はなく、肩を揺すられ声を掛けられた。顔を見ずとも分かる、こいつは副会長だろう。面倒な奴が来たものだ。

「揺らすんじゃねえ」

 腕を叩き落とし身を起こせば視界に入る副会長の不安げな顔。小綺麗なそれは見るだけで苛々する。

「体調悪いんですね……。全く、貴方はすぐ無理をする」

 本当に面倒な奴だ。放っておけばいいものをこうやって世話を焼く。こういう一面を見せる相手が自分のみだと思うと吐き気がするが、冷たい手で頬を撫でられればそれもいいかもしれないと思い直してしまう。

「うっせ。別に無理なんかしてねえよ」

 冷たい手は頬から頭へ移動し、髪を優しく掻き混ぜ始めた。

「寝るところだったんでしょう。ほら、寝て下さい。側にいますから」

 瞼が少しずつ重くなってくる。

「ばーか、どっか行きやがれ……」

 気付けば俺は眠りに就いていた。



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