青と闇と穴



 見渡す限り青。全てが青に塗り潰されている。

 この青は蒼でもなく、碧でもない。ただただ真っ直ぐとした青である。

 身を刺すような寒さに身を震わせながら歩む。今年の冬は雪が多く、寒さが続いているのだとか。テレビで言われていた情報である。僕からすると、去年の寒さなど覚えていないし、どう違うのかいまいち分からないのだが。まあ、テレビの情報だ。正しいのだろう。

 辺りが暗くなってきた。それでも周りの青色は色褪せる事なく僕の視界を浸食していく。それに魅入りつつも歩を進めると、ぎゅ、ぎゅ、とした独特の音が耳に届いた。いつの間にか雪の積もっている所に脚を突っ込んでいたみたいで、ズボンが白くなっている。

「うわっ、冷た……」

 立ち止まる。雪が冷たい。何となくそれに耐えて空を仰いでみた。

「……すげ」

 既に空は闇に染められていた。そこには穴が空いているかのような白がぽつりと孤独そうに佇んでいる。それが、ただただ美しくて。足の冷たさなんて忘れてしまった。

 目の端には真っ直ぐとした青。それを囲むように闇が漂い、孤独で儚げな星が点々としている。見詰めていれば、白が増えた。気が付くといつの間にか雪が降っていて、僕の顔にうっすらと積もっている。

 思わず笑いが零れた。久々、いや、初めてかもしれない。こんなに真剣になって空を見たのは。

「……帰るか」

 その日は派手に服を雪で彩りながら家まで走った。



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