*覚めない夢



 家族3人、川の字になって寝る。僕はもう高校生だがそれは変わらない。自分の部屋がないという事ではない。自分の部屋はちゃんとあるし、父の部屋も母の部屋もある。ただ単に3人で1つの部屋で寝た方が落ち着くし、暖かいからだ。

 恥ずかしいとは感じない。恥じる事ではないと思っているから。

「……」

 寝付けない。いつもはすんなりと意識を手放すのに。疲れていないのだろうか。

 すると、右の太腿に何かが触れた。僕の右側に居るのは父だ。きっと父が寝返りでも打ったのだろう。

「……ッ?」

 太腿に触れていたものが股座へと移動した。ゆるゆると触られ嫌でも反応してしまう。

「と、父さん?」

 小さく問い掛けても返事はなかった。

「や、やめ……やめてッ」

 身を捩り抵抗すれば、自身を強く握り込まれた。あまりの痛さに思わず潰れた蛙のような声が出る。

「静かにしてろ。よくしてやるから」

 低く、酷く安心させる声。でも今は恐怖しか得られない声。

「ほら、気持ち良いだろう?」

 またゆるゆると触られる。それは段々と強弱を付けるようになり、激しくなっていった。

「お前、寝てると全然反応しなくてなあ。寂しかったよ」

 どういう事。何を言っているの。

「愛しているよ。……あんな女より、ずっと」

 これは夢か。夢であってくれ。



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