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「あー、すみません」
「……本当のこと、だから」

 なんとなく気まずくて謝ると魔王様は首を横に振って、反対に謝ってきた。この間、ずっと視線は浮遊していたが悪い人ではないらしいことはなんとなくわかった。
 この性格で魔王様か。レイが心配するのもわかるなぁ。
 しみじみと見ていると黒髪さんが見かねたのか、俺の名前を呼んだ。――ちなみにこの人は騎士団長のベルベア・ウィルヘルムさんというらしい。――そちらを見ると、俺の耳につけてあるものを示された。

「それでレイ様と話ができるらしいが、今、本人とは繋がるのか?」
「え?あ、た、多分?」

 まだ貰ったばかりで使用したことがないから、上手くいくかはわからない。曖昧に頷くとウィルヘルムさんは「それなら」と、とあることを提案してきた。
 曰く、レイに繋げて現状を確認したいと。勇者は風の国であるレチェッタの客人として今まで扱ってきた。しかしこの状態が続くようなら、処置を考えないといけない。国同士のことに君――つまり俺――を巻き込むのには反対だと、そう伝えて欲しいらしい。

「一応伝えますけど、お返事とかは本人から聞きたいですか?」
「いや、ハヤトからでいい。その石を手にしていた者を疑う意味がない」

 そうですか、と頷いて首にかかる石を手に取る。この石はそんなに意味があるものだったのか。レイの物とはいえ、丁寧に扱わないと今後に関わりそうだ。

「それでは少し時間をください。使用方法を聞いたとはいえ、使うのは初めてなんで……」
「ああ。大丈夫だ。……アルバーツ様、レイ様に何かお伝えしたいことはありますか?」
「……あ、えと……レイは、げんき……?」
「え?ああ……元気と言えば元気です。少し疲れていたみたいですが……ただ、別れる間際に見つかったと言っていたのでその点が気がかりですね」
「……見つ、かった……?」
「俺にはわからないですが、誰かに見つかったと。それで俺は一人でここに飛ばされたんです」
「……ベア」
「わかっています。レイ様なら大丈夫ですよ」

 俺の言葉に不安そうにウィルヘルムさんを見上げた魔王様は、一度きつく目を瞑った後、初めて俺に視線を合わせた。

「レイに、伝えてくれるかな?俺のために、ありがとう、って」
「……わかりました」

 ぱちりと合った緋色に、レイの碧と対称的な色なんだな、と考えて頷く。
 レイの碧眼は空の青に緑を合わせた穏やかな色。魔王様は、さっき高台で見た夕焼けをもっと深くさせた強い色だ。

「えーと、それじゃ、やってみます」

 赤と黒の二対の視線に見守られながら、耳につけられたピアスに触れる。固い石の感触を指先に感じながら、教えられた通りに話したい相手の顔を頭に思い浮かべた。

 ――レイ、ちゃんと応えろよ!

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テーマ「人外ファンタジー」
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