こんにちは、変態さん

 うるさいな。これは夢だ夢。それでいい。泥棒なら自分から出てこないだろうし。幽霊も昼間には出ない。なら、この変態さんは幻だ、夢なんだ。
 段々と考えるのが面倒になってきた僕は、タオルケットを頭から被って視界から変態を消した。

「変な人から変態にグレードアップしてるしぃ。まぁいいや。少年、質問に答えてー」
「……何の」
「だから、『貴方ハ勇者軍ト魔王軍ドチラヲ選ビマスカ?』って書いてあったっしょー」

 ああ、あれか。答えたらどっか行くかな。それなら答えてやらなくもない。

「じゃあ……味方の少なそうな『魔王軍』」

 さっきの内容を思い出して、勇者の味方はなんか後味悪そうだし。

「……うん。うんうん。やっぱり俺が見込んだとおり!ありがとうー!」
「はぁ?」

 さっきよりテンションが高くなった変態に、タオルケットから顔を出す。何やら感激している様子だ。
 変態を喜ばす何かを言ったらしい。いや、魔王軍で、としか言ってないんだけども。勇者のほうにしとけばよかったか?
 俺が絶賛後悔中なのに、それに反比例して嬉しそうにテンションを上げていく目の前の残念な人。関わらなければよかった。いや、この人は勝手に入ってきたから、俺が家にいなければ良かったんだ。……どこにいても会いそうだったけど。

「ふふー。それじゃあ張り切っていこうねー」
「……え?う、わっ!?」

 変態の言葉とともに部屋の中に突風が吹いた。思わず携帯とタオルケットを握りしめて目を瞑った。
 何が起こっているのか理解不能だけど、これだけはわかる。

『コイツに会わなければ良かった』

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