7

 ふわり、と小さな風が過ったと思うと、荷物の山が袋へと次々に吸い込まれていった。

「へぇ、どっかの四次元ポケットみたいだ」

 それを隣で見ていた少年が感心したように呟く。
 ジジはそんな彼に得意そうに笑うと、布袋を少年へと手渡した。

「ほらよ。これはサービスだ。持っていけ」
「マジ?ありがとうございます」
「コレがあるなら、もっと買っておけばよかったねー」
「いや、これだけで十分だって」

 呆れたような困ったような表情をする彼に、それでも足りなかったと思ってしまう。

「でもでもー」
「はいはい。もういいって」

 軽くあしらわれてしまった。段々と俺の扱い方がわかってきたらしい。少年はそのまま布袋をポケットへといれた。
 不満有りありに少年を見るけどべし、と頭を叩かれたので渋々とジジのほうを見る。すると、にやけ面が目の前に。

「ジジ、何か言いたいならにやけないで言葉にしてくれるぅ?」
「なんだ、言ってもいいのか?」

 にやにやと笑ったまま俺から少年へと視線を移す。つられて見ると訝しそうにジジを見る少年。
 少し考えて首を横に振って否を示すと、だろう?と言うようににぃ、とジジが笑った。

「……おい、何アイコンタクトしてんだよ?」
「なんでもないよー」

 もしここで、ジジが何か不埒なことを言って少年が不機嫌になったら困る。お別れの時間が迫ってるのに、最後にむっつり顔は嫌だしぃ。
 なるべく俺といた時間を楽しいと思って欲しい。きっと俺と別れた後が大変なことになるだろうから。
 だから、できる限り少年に何かしてあげたいと思うけど、どうにもうまくいかない。

「さて、他に必要なもんはあるか?」
「ん?んー。……少年、何かある?」
「いや、特に無い。そろそろ行くか?」

 部屋の周りをおもしろそうに眺めながら首を振る彼に、うんと頷いて立ち上がる。
 もう少しゆっくりしていきたいけど、さすがにこれ以上自分の城を放置するわけにはいかないし。

「それじゃね」
「お邪魔しました」
「ああ、気を付けてな」

 ジジに見送られて店を出る。さて、少年を連れて行きたいとこがあるけど、彼は気に入ってくれるかな。

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