▼ 4
対面も済んで、美形さんが座っていたソファーにレイと並んで座る。美形さんはさっき、何かを取りに部屋から出て行った。
「……なぁ、ここでは何を買うんだ?」
「んー?さすがに少年と連絡が取れなくなるのは困るから、通信ができるものと後いくつか」
「へぇ、魔法とかで会話はできないのか?」
「できるけど、さすがに俺の気を使って魔法を使うとおバカ連中にバレる可能性があるからねぇ」
思っていたより色々と考えていたらしい。ちょっとだけ見なおした。本当にちょっとだけだけどな。
それから美形さんが戻ってくるまで、魔法の簡単な仕組みや魔道具についてのレイによる勉強会をしていた。
「ほらよ。頼まれてたものだ。中身の確認してくれ」
「ありがとー。ジジは仕事が早いから助かるよー」
向かいの椅子に座った美形さんがテーブルに置いた小さな袋をレイが受け取る。中身が気になって手元を覗き込むと、はい、と袋を開けてくれた。
「……ピアス?」
「そー」
中に入っていたのは、紫と緑の二つの綺麗な石がついたピアスだった。レイは対の片方を自分の手に、もう一つを俺の手に乗せた。
「何?」
「これが力を使わなくても話ができる魔道具。この石の部分に、自分と話がしたい相手の血を垂らすんだ」
「マジで?」
「ほんの少しだけだ。指を切って滲んだ血をあてればいい」
なるほど。頷いてみたけど実際に指は切りたくはない。眉を寄せたままピアスを見つめていると、ふいに手元が陰った。
「ぃっ!?」
ガリッ、という鈍い音と一緒に耳に鋭い痛み。慌てて耳に手をやろうとすると、それを遮るようにレイがピアスを耳に当ててきた。
「なっ、何すんだバカレイっ!!」
「うんうん。後で聞くからちょっと待ってねー。血が止まらないうちにやらないと……はい、終わり」
文句を言おうとすると宥めるように頭を撫でられて、言う言葉に詰まった。
そうこうしている内に、色が変わったピアスを手渡された。紫と緑だったのが青と緑になって変化している。
「なんで?」
「そういうものだから。あ、ちゃんと俺の血も垂らしたから離れてても会話できるよー」
「そうか」
「………オイ」
耳の痛みも忘れて日常にはなかったピアスを見ていると、存在を微妙に忘れていた美形さんが少し驚いたように声をかけてきた。
顔を上げて首を傾げると、少し迷うように口を開閉した後。
「……お前等、できてんのか?」
「「……」」