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 カランコロンとベルの鳴る音が店内に響く。レイの後に続いて中に入った瞬間に、ぴりりと体が痺れた。

「……?」
「防犯のためだよ。体の『気』を探られたんだぁ」
「ふぅん」

 よくいうオーラみたいなものか?首を傾げながら周りを見渡すと、石やブレスレットみたいな装飾品が棚に並べてあった。
 相変わらず俺のよくわからない目は文字を読めるらしく、視線を向けた値札に書いてある文字が次々と頭に入ってくる。元の世界に戻っても使えたら便利なのに、と思いつつレイを見ると店の奥へと入っていくところだった。
 慌てて追い掛けると、店の奥にも部屋が続いていたらしい。レイがドアの前に立ち止まって手招きしてきた。

「ここの店主はねぇ、少し変わった人なんだー。買うときには商品の代金をこの部屋の前に置いておくのー」
「盗まれたりとかはしないのか?」
「うん。さっき入る時に、気を探られたでしょ?代金を置いていかなかった人は、それで追われちゃうんだぁ。気って人によって違うからねぇ。あっという間だよぉ」
「へぇ、なるほど」

 頷くとレイがトントンとドアをたたいた。応えの声が無かったけど、しぃと口に指をあててからドアを開けた。おい、いいのか。

「いいのー。多分寝てるからぁ」
「店としてどーなんだそれは」
「まったくだよぉ。でも、質とかはここが一番いいからねぇ」

 ニコニコと笑って部屋に入るレイに、ため息をつきながら肩を竦める。
 実際、こういうとこだから王子だなんだと普通に買いにこれるんだろう。さっきの店はすごかった。レイが王子だとわかるやいなや、低かった腰が更に低くなり対応が店長に変わり何故か出る間際にも深々と頭を下げられた。
 それに対してレイは慣れたように笑っていたけど、今みたいにへらへらとはしてなかった。爽やか王子スマイルだった。

「あー、ほらぁ。やっぱり寝てるー」
「……その人が店主?」
「そうそう。ちょっとジジ、起きてー」

 広い部屋に一つだけ置かれたソファーに、ぐでんと横に寝ている二十後半の強面な美形さん。その肩を叩きながら起こそうとするレイ。
 さっきの話から、おじいさん辺りの年齢の人が店主かと勝手に思ってた。以外に若い。

「……眠、い」
「眠い、じゃないから。起きてー。頼んでた『アレ』はどうなったのー?」
「んんー……」
「起きないな」
「起きないねぇ、……って、少年何してるの」

 苦戦してるレイの横に並んで、その人の鼻を摘んで口にも手を置くこと数秒。目を開いた美形にバシバシと手をたたかれた。

「んぐ!むぐーっ!」
「起きた」
「……起きたねぇ」

 じたばたとする美形さんの口元を手で押さえたままレイを見ると、笑うのを耐えるような表情で見てた。
 「離してあげなぁ」と言われてようやく離す。すると、美形さんは勢い良く起き上がって肩で大きく息を吸った。

「おま、殺す気かぁっ!?」
「起こすのに、一番手っ取り早い方法を取っただけです」
「……反省の『は』の字もねぇな、おい」

 酸欠のせいか青い顔をした美形さんは、呆然とした表情で俺を見る。アホ面でも、顔は美形のままだ。当たり前だけど。

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