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「俺が見ても変わったものがたくさんあるんだー。昔はね、よく来てたんだー」
「へー。魔王とか?」
「お忍びでね。さすがに2人付き人がいたけど」

 懐かしそうに表情を緩めるレイにそうか、と頷く。国を治める人同士が中がよいのは良いことだよな。平和ってことだし。……まぁ、今は仲良しこよしできる状態じゃないからな。

「それで?」
「ああ、ええーとねー……扉の横に、赤い石があるでしょー?」
「ん?ああ。ある」
「それを手に取ってー」

 ドアの横というか、下にあった赤いルビーのような石を言われたと通りに手に持つ。小さなその石は手のひらに納まるくらい。それを握る手をレイに握られた。

「あん?」
「喧嘩腰はやめてー。この店に入る人は皆、一回やんなきゃいけないんだー」

 朝のこともあったので思わず睨みあげると、困ったように笑って口の中で何か呪文を唱えた。俺の知らない言葉に反応するかのように、赤い石が光を帯びていく。

「なんだ……?」
「ん、危ないものを持ってないかのチェックだよー。この石には探知の魔法がかけられてるんだー」
「探知?」
「そー。協力な道具を持ってる場合はこの石の中に入っちゃうんだ。店から出ると自動的に出てくるんだよー」
「へぇ」
「まぁ、店にある道具と相性が悪い場合、爆発とかもするしねー」
「……へぇ」

 段々と、理解することを頭が拒否してきてる気がする。ファンタジーはやっぱりゲームだからこそだよな。うん。
 そんな風に呑気に構えていると、不意に石の光が消えた。探知終了ってことか?

「ん、もう離してもいいよー」
「はいよ」

 石から手を離すと、レイがその石を懐へとしまってしまった。あった場所に戻さなくていいのか?

「一個、石に持ってかれちゃった」
「は?危ないの、持ってたのか?」
「まぁ、危ないっていったら……危ないものかなぁ」
「?」
「まぁいいから。コレで店に入れるよー」

 腕を掴まれて引っ張られてた。何か誤魔化されたような気がするんだけど。−−でも、きっとコイツは言わないだろーし。
 短い付き合いだけど、レイは何気にわかりやすい。言っても良いことはほぼ即答で教えてくれる。
 でも、俺が知ったらダメなことは全力で隠されてる。少し気に食わないけど聞き出そうとは思わない。
 いつか教えてくれるだろうし、何より、今は自分のことで手一杯だ。

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