お買い物へ行きましょう

 宿の1階で腹ごしらえをした後、ざわざわとどう見ても人じゃない魔族達が賑わう商店らしき場所にいた。といっても、レイが俺に服を見繕っているだけなのだけど。さっきから「これは?これはー?」と次から次へと服を持ってくる。聞かれてもいまいち俺にはこの世界の服がわからないから答えようがなく、任せてみたら。

「この服もいいかなぁ?」
「ええ、お連れ様にとてもお似合いです!」
「だよねー」

 きゃっきゃとはしゃぐ声が両脇から。そして呆然と立ち尽くす俺は、変態と猫耳で笑顔の可愛い店員さん2人に着せ替え人形とされている。それは、まぁいい。不本意ながら慣れてる。が、1つどうしても確認したい。

「……おい」
「なぁに、少年」
「何着あるんだ、ソレは」
「えー?あって困るものじゃないしー」

 金を出している本人は大丈夫でしょ、なんて軽く笑うけれど、次から次へと籠の中に増えていく服の山にコイツの金銭感覚を疑う。金持ちというか一国の王子様だけれども、いいのかこんなのにそんな金を使って……。

「ふふーん、いいんだよ。俺が働いたお金だしー。普段は金使わないしー?」
「働いた?」
「そ。身分だの何だのを隠してちょいちょいっとね!」
「……ふーん」

 突っ込むのも面倒になって籠の中の服をいくつか店員さんへ返す。こんなにいらないし派手目なものは着れない。

「ん?少年はそういうのは嫌いー?」
「嫌いというか、……俺にこの色が合うと思ってるのか?」

 店員が戻していく服の色はピンク、黄色、黄緑など蛍光色ばかり。さすがにコレは無理だと思うものは山から抜き出して戻してもらった。不満そうにしている奴が1人いるけど気にしない。
 買ってもらう身ではあるけれど、配色くらいは選びたい。蛍光色は嫌だ。

「それだけでいいのー?」
「これだけで十分だ。人の家に荷物をそんなに持ってくもんじゃないだろ」
「家っていうか城だし、広いから大丈夫だと思うんだけどなぁ」
「バカ、長く世話になるかもしれない場所で気を使わせるような事項を増やすわけにはいかないだろ」
「えー?」

 不満そうなレイを引っ張って会計を済ませ、選んだ中で一番地味な服に着替えると、次に連れていかれたのはずいぶんと趣のある店だった。外装は木でできたコテージでボロイ。看板も何もないそこは他の華やかな店ばかりの通りには少し異質に見える。

「……ほんとにここなのか?」
「だよ−。アルテルシオン一の魔道具屋さん」
「まどーぐ?」
「魔法が宿った道具を売ってるお店だよ。少年の世界のゲームとかにもあったでしょ?」
「ああ、アイテム屋みたいなもんか……」

 例えられてやっとわかった。そうすると武器屋とかもあんのかな?やばい変なとこでわくわくしてきた。人間の好奇心って凄いよな。

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