朝起きてみれば

 少しだけ、期待をしていたかもしれない。寝て起きれば夢だったんじゃないかと。
 でもやっぱり、暖かい布団の中。起きてみたらそこは馴染みのない部屋で、隣には昨日あったばかりの……あれ?

「……え」
「んー……」

 むにゃむにゃと寝言を言いながら、ぎゅうと抱き締められた。
 思わず固まってしまい、その美麗な顔を見上げていた、が。

「……てめぇコラ、レイぃいいっ!!なんで一緒に寝てんだ!?お前は隣のベッドだろうがぁあっ!!」
「いだっ!」

 呑気な顔で寝てた金髪の変態を、ベッドから勢い良く蹴落とした。


* * * * *



「少年、ごめんってー」
「……」
「寝呆けて間違えちゃったんだよー」

 ベッドの中でふて寝する俺に、布団越しに情けない声がかけられる。困ったように眉を寄せている顔が難なく想像できる。けど、男同士同じベッドで寝るという薄ら寒い状況を作ったバカに対して、少し困らせてやろうと布団からはしばらく出ないと決めた。

「ねー、服とかさ、必要なもの買いに行こー?お腹もすいたでしょー?」
「や」

 俺をあまり刺激しないためか、ベッドの端に座ったまま触らないように布団を引っ張ってくる。俺も負けずに、少し暑いけど布団に頭まで潜ったままだ。

「もー……『や』って可愛いなぁ」
「何?」
「何でもないよぉ」

 さっきまでとは違い、もごもごとレイが何か喋った。聞き取れなくて聞き返すと少し焦ったように否定された。

「それよりさぁ、この世界にどんなものが売られてるとか気にならないー?」
「別に」
「うぅ……えーと、えーと……ごめんなさいー」

 情けない声が、更に情けなくなる。そろそろと布団から顔を出して様子を伺うと、しょんぼりと耳と尻尾を垂らしたレイがいた。
 ――……しょーがない奴、だなぁ。俺がこうやって顔を出しているのに気付かないなんて、それでも王子か。なんてな。

「レイ」
「……!何っ?」

 声をかけると勢いよく顔をあげたレイは、不安そうな気配を残しながら俺の頭を撫でた。

「腹、減った」
「……うん」

 だから、外出るぞって言ったら物凄く嬉しそうに笑った。……そんなに喜ぶようなことじゃないだろ。

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