お勉強会をはじめましょう

「さて、お待ちかねお勉強をやろうかぁ」
「ういー」

 シャワーを浴びて宿の女将さんに簡単なご飯を貰った後、レイが手招きしてきた。ベッドに座る彼の隣に、弾みをつけて座る。

 にっこり笑ったレイは「何からにしようかぁ」と、言いながらわしゃわしゃと頭を撫でてきた。

「ああそうだ。少年に聞いとくことがあるんだよねぇ」
「何?」
「うん。コレ、読める?」

 懐に手をいれ、取り出したものをはい、と差し出された。古い紙の巻き物らしきもの。
 一度レイを見てから受け取って広げて中を見ると、黒いインクで書かれていたのは見覚えの無い文字らしきもの。

「あ、あれ?」
「んー?」
「知らない文字なのに、読めるんだけど」

 そう。まったく知らないミミズののたくった奴なんだけど、頭の中では意味が自動再生してるように流れる。

「それはよかった。字が読めなかったらどうしようかと思った」
「あー。でも知らない場所の文字が読めるのは、微妙な感じだぞ?」
「まぁそうだろうねぇ。俺も少年の世界に行った時は、見知らぬ字ばかりで戸惑ったしー」

 軽く言ってるが、別の場所で行動するのは結構大変なことだろう。現に、俺自身もレイがいなかったら、この町に来るのも困難だったはず。

「元凶はレイだけども」
「なぁに?」
「いや。……それより、これは……こう、小さい子に対する教育の?」
「んーとね、だいたい四歳から六歳あたりのかな」
「ほう。俺は四歳児か」

 軽くレイに八つ当りをしながら巻き物に目を通す。内容はこの世界の基本となるような事が、わかりやすく書いてあった。
 例えば、この世界には人族、魔族の他に聖霊や妖精などがいること。言い伝えとして、この世界に危険が降り掛かる時、勇者が召喚されること。
 召喚方法など詳しいことは書いてなかったけど、この世界に勇者が呼ばれてたことは何度かあるよう。
 でも一つだけ気になったことがある。

「なぁ。勇者の帰し方とかはあるのか?」
「帰し方?」
「なんかこれ読んでるとさ、『勇者様により末長く幸せな時代になりました』とか『まおうをたおしたゆうしゃさまはそのあとも、くにをまもるしょうちょうとなりました』とか。帰ったっていうのがないんだよ」
「……そういえばそうだねぇ」
「だろ。なんか少しおかしくないか?書いてないだけで、皆ちゃんと帰ってんのかな?」

 二人でうーんと唸る。……いや、レイは唸ったらダメだろ。

「なぁ、レイ」
「……え?あ、なぁに?」
「俺は、帰れるの?」
「……」
「……」

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