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最初に見つけた時は、少し驚いた。あの勇者と同じような言動をする少年を、当たり前のように怒っていたところで。
俺の場合はあの勇者を持て余し、結局はそいつ等の好きなようにさせてしまった。そして、ある意味暴走した変態から他国という障壁故にアルを助けることができなかった。
国を守りたい俺と、昔からの友人を救いたい俺がいる。どうしたらいいかわからなかったその時の俺にとっては、衝撃が凄かった。
『いいか、責任っていうのは少しでも関わったら自動的に負うものなんだ。テメェはその責任を放棄してあの馬鹿共を焚き付けやがったんだ。今すぐ行って土下座して謝ってこい。今すぐだ。わかったらとっとと行きやがれ!!勘違い意味不明○○カス野郎っ!!』
見た目は美人で少し大人しそうな少年が、それはもう顔に似合わず手加減なしの罵詈雑言。長年の付き合いがあるからか、怒りの頂点だったからか。見ていていっそ清々しかった。
そして決めた。この子にしよう。きっと多大な迷惑をかけてしまうだろうけど、きっとこの子なら何かしらの風をいれてくれる。
この期待は彼にとっては重荷でしかないだろう。そんなことはわかりきっている。それでも。どうしても、あの子ではないと駄目だと、そう思った。初めての感情に戸惑いを覚えたけど、自身の感情に従うことにした。
「レイーっ!ど、ドアが開かないっ」
「んー?ドアぁ?壊れちゃったのかなぁ。ちょっと待っててねぇ」
俺の中で巡る、たくさんの感情。どれもが曖昧なものばかり。中途半端。こんな俺が王子で民は可哀想だ。
「んー、はい。開いた」
「え、な、なんで?」
きょとんと見上げてくる彼に、感情に蓋をして笑いかける。
「あれだよ、きっと。虐めやすいんじゃないかなぁ?」
「え、俺ドアに虐められたわけ?」
――このまま俺のことを知らない場所へ、彼を連れていきたい。そんなことは考えちゃいけない。