心の中の

 レイは俺は冷静だと言っていた。
 けど、そう見えていただけで、実際は心の中の悲鳴に目を逸らして、気付かないふりをしていただけなんだ。一人になってみるとよくわかる。渦巻く不安と混乱で潰されそうだ。
 深く息をつきながら、ゆっくり体から力を抜いてベッドに横になった。天井を見つめる。取り乱さないように、なるべく自分の許容範囲を越えないよう思考を続けた。
 泣いて騒いで怒りの感情をレイに向けても、今更仕方がない。そんなことをしてる暇があるなら、この後の動きを考えないと。
 明日はいよいよ城へと向かう。中には色々な種類の魔族がいるらしい。レイによれば耳があったり羽があったりなど、後は半獣やまんま獣型もいるそうだ。まずはそれを見て、顔が引きつらないかが心配だ。

「はぁ……」

 深いため息を、今日だけで何度ついたかわからない。
 城に入ったらレイはいなくなる。それまでに色々と情報を取り入れて整理しないと、きっと一人取り残された時には発狂してしまう。俺がいま冷静を保てるのは、ある種の現実逃避と、俺の状況を知っているレイが隣にいるからだ。
 いくら俺をこの場所に連れてきた張本人とはいえ、味方だと確信できているのは彼だけだから。どうしても存在に寄りかかりそうになる。

「……はぁ」
「深いため息だねぇ。どうしたのー?」
「……出たのか」

 ふ、と天井が金色に染まった。いつの間にか出てきたレイが、ぽたりと髪から雫を垂らしながら覗き込んできたらしい。

「まぁねぇ。お夕飯の用意するから、次浴びてきなよー」
「うん」

 手のひらでレイの額を押して、ゆっくり起き上がる。

 ――今、くよくよとしても仕方ない。当たって砕けろの要領で精一杯やってみよう。
 気合いを入れ直すとベッドから降りて、さっきレイが入っていった扉へと向かった。……あることを失念したまま。

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