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「でも、よくそんな奴に懐けるな……」
「それは俺も不思議なんだよねぇ」
小さく笑いながら遠い目をするレイに、ああこいつもこいつで大変だったんだなあ、と理解できた。
俺にも勇者と似たような知り合いがいるが、さすがに誰も彼もが懐くわけではなくただのトラブルメーカー。火消しはもっぱら俺ともう一人……そいつの幼なじみがしていた。
なんとなくだけど、レイの苦労はわかる気がする。
「……それで?」
「次は君を連れてきた意味だねぇ。アルをもう少し……せめて勇者を自分で追い払えるようにして欲しいんだぁ」
「無理です」
「……だって、あーいうのの扱い、少年は知ってるでしょー?」
「知りたくなかったですけどね」
そんな面倒な事してられません。無理。せっかくのゴールデンウィークだったのに、何が楽しくて第二のお馬鹿の相手をしなきゃならん。
「……それより、何で俺がああいうのの扱い方を知っているって……」
「ふふーん、見たからね!」
「見た?」
「そー。誰がいいかなぁって少年の世界に見に行った時に、勇者と同系統の子をめっちゃ叱ってたとこ!」
「あー……」
なるほど。ということはレイは元から俺の事を知っていたのか。
にこにこ笑う目の前のイケメンに、思いっきりため息をつきたくなった。
「だからぁ、ね?」
「いやいや、ね?じゃないし。ゴールデンウィーク何もするなってあいつを丸め込むのにどんだけ時間がかかったと……」
「じゃないとね、もしかしたら戦争になるかもしれないの」
「……は?」
いきなり大きな話になって、頭がついていかなくなる。ぽかんとレイを見上げていると、困ったように笑って頭を撫でられた。
「言ったでしょー?勇者に懐いてるって。アレね、恋愛感情での意味。だから面白くないわけだよ。勇者が魔王が好きってことがねぇ」
「だから、下手したら戦争を吹っかける可能性がある、と?」
「そーいう事。最近、露骨にピリピリしてるしぃ。……きっかけがあったら、きっと動くだろうねぇ」
「きっかけ?」
「そう。例えば、アルやアル側の人達が勇者に怪我をさせたら?プッツンするでしょ。それに、腐っても勇者だから、国の民もアルテルシオンに反感を持つだろうねぇ」