▼ 『理由』と『意味』
「理由はぁ、少年が魔王を……アルバーツを選んでくれそうだったから。現に、少年は勇者より魔王を選んだしー。俺の目に狂いはなかったよ」
「……アルバーツ?」
「魔王の名前。ちなみに、俺とアルは幼なじみな関係です」
「魔王と王子が?」
「うん。元々、レチェッタとアルテルシオンは仲が悪いわけじゃなかったしねー。ちっちゃい頃とかは良く遊んだよー」
そういう関係だったから、さっきから親しげな感じだったのか。
人間と魔王って仲が悪いもんだと思ってたけど、この世界では違うんだ。
「あれ……でも、そしたらおかしいだろ。なんで勇者なんか呼んだんだ?」
「さぁねー?聞いても教えてくれないしー」
俺、王子なのに。って頬を膨らませて不貞腐れるレイ。美形は何をやっても絵になるなうらやましい。
「それにさぁ、周りの奴等も人が変わったみたいに勇者なんか崇めちゃって。意味わかんないしぃ」
「そうなのか?」
「そ。ちやほやして甘やかして、一日中かまい倒してんの。仕事しろー、って思わず魔法でぶっ飛ばしちゃったくらい」
ぶっ飛ばしちゃったんですか。そうですか。スカッとしたよ、と笑うレイに、苦笑いだけ返して先を促す。
「そんでぇ、とりあえず俺んとこで信用できるっつったら軍師くらいかなぁ。他はダメ」
「へぇ……」
ダメって断言されるくらい信用失ったのか。自業自得ではあるけど可哀想というか、哀れというか。
そこまで懐けるもんなのか不思議だけど、その勇者っていうのは一体どんなもんなんだろ。話を聞くかぎりじゃ、魔王のストーカーとしか認識できないんだけど。
「その勇者ってどんな奴?」
「馬鹿でかい声でうるさくて人の話を全然聞かなくて、自分が可愛いって思ってるような奴」
「……」
そういう奴、確か身近にいたような気がするんだけど……気のせいだったかな。
「ちなみに、少年の知り合いではないよ」
「それは良かった」
何で思ったことがわかるのか、っていう突っ込みは安堵し過ぎてて忘れてた。