▼ とある男子高校生の一日
「……目に痛いピンク色が」
そろそろと足音を立てない様に近付く。そして、足元に狙いを定めて、奴の膝へ一撃を入れてやった。
「うわっ!」
「女子高の恨み、思い知ったか」
「しょーくん?え?何、女子高?」
膝かっくんを食らわした相手はがくりと下がった足元に驚いた声をあげたが、すぐに態勢を立て直しやがりました。本当に残念だ。
「おはよう」
「え?えー……おはよう」
一瞬前に膝かっくんしたことを忘れたように挨拶をすれば、ふに落ちないという顔をしながらも挨拶を返してくれた。さすが幼馴染、俺の性格を俺よりも知っている。
隣に並ぶと、亮賢はさっき歩いてたスピードより早くなった。どうも俺の歩くスピードが亮賢より速いらしく、こうやって並んで歩く時は亮賢が合わせてくれる。俺が合わせようとすると、極端に遅くなるからだ。
「しょーくん、この時間珍しくない?」
「布団が恋人だから」
「寒いもんねー」
俺の言葉を正しく汲み取った亮賢はふむふむと頷く。それと同時にゆらゆらと揺れるピンクの髪に、悪戯心で手を伸ばすと触れる寸前で後ろに逃げられた。
「……なんで逃げるんだ?」
「引っ張るつもりだったでしょ」
「なんでわかったの」
「幼馴染なめんな」
踏ん反り返って言われていらっときた。仕方なく隙だらけだった脇腹をくすぐったら笑いながら泣かれてドン引いた。
馬鹿なことをやりながら歩いていると、気が付いたら学校に着いていた。
「しょーくんはお昼、購買?」
「うん、何で知ってるし」
「鞄が薄いから」
「なるほど」
弁当箱が入ってたらもう少し厚みがあるからね、と笑う亮賢にそれもそうだ、と同意する。そうすると亮賢は「俺も昼は購買だから迎えに行くね」と言って走って行った。まだ返事もしていないのに。人の話しを聞いてから教室に行って欲しい。
静かに憤慨していると、ふいに思い出した。
→「昼は委員会だった」
→「昼は約束があったんだ」
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