have no interest in colleague

 たくさんの生徒達が行き来する校庭。
 長引いた夏風邪を治して久々に登校した俺は、いつもどおりに下駄箱をめざして歩いていた。
 でも、少しだけ雰囲気が少し前と違うことに気付いて足を止める。
 まわりを見ると小さな子犬のような可愛い子達が、一点を見て顔をしかめて睨んでいた。
 首を傾げながら視線を辿ると見慣れた背中。引き寄せられるようにふらふらと近づく。すると、何人かが挨拶をしながら道を開けてくれた。
 ようやく近づくと、そこには知らない人と知ってる人達が何かを騒いでいた。とりあえずその人達どうでも良くて、その様子を静観していた人に近づく。

「……不知火、先輩」
「円香か」
「ん、……おはよ」
「おう」

 挨拶すると飼い犬にするようにわしゃわしゃと頭を撫でられた。手付きと体温が気持ちよくて目を瞑ると、小さく笑う気配。

「……アレ……何……?」

 不知火先輩の大きな手で頭を撫でられながらそっちを指差すと、先輩に「バカが移るから見るな」と視界を遮られてしまった。
 ……バカって移るのか?

「……?」
「気にするな。KYとバカとアホと間抜けだ」
「…………?」

 首を傾げていると「行くぞ」と手を取られた。歩きだして気付いたけど、まわりにいた生徒達の人数が減っている。そっか、そろそろ行かないと授業に遅れてしまう。

「あーっ!!」
「……っ!?」

 急に響いた大声に、びく、と体が揺れた。一歩前を歩いていた不知火先輩は気にしならなかったようで、俺の手を引いたまま歩き続ける。
 俺は気になったけど、俺が止まると先輩も足を止めることになるから少しだけ、顔をそっちへ動かしてみた。

「不知火!なぁ、どこに行くんだ!あ、ソイツは誰なんだよ!?紹介してくれ!」

 黒いもさっとした髪をした奴が、不知火先輩以外の生徒会達を背に叫んでる。
 先輩を呼んでる?あれ、でも何で名前で呼んでるんだろ……?

「せんぱい、ともだち……?」
「あ?ちげぇよ。振り返るな」

 でも先輩は名前を他の人には呼ばせていなかったはず。友達じゃなきゃ、何なのだろう?

「あの脳足りんのバカ共が勝手に俺の名前を教えやかったんだよ。マジで使えねぇ奴ら」

 忌々しそうに舌打ちする不知火先輩。俺が休んでいた間に色々あったらしい。思い返してみれば、見舞いにきていた先輩は少し疲れていた。アイツのせいだったのだろうか?

「不知火!無視するなよな!友達を無視するなんて最低だぞ!!」
「……」

 確かに疲れそう。声も言葉も威圧的で、聞いていて少し不愉快。思わずあいた手で耳を塞いでしまった。
 それに――最低?先輩のことを言ってるの?俺からみたら周囲を見ずに騒ぐアンタが最低。

「……うる、さい」
「なっ!俺にそんなこと言うなんて最低だ!今なら謝れば許してやるから!」

 ……こういうの、なんて言うんだっけ。自己中心的?
 ぼんやりと考えていたら、いつの間にか足を止めていた俺の頭を自分の肩に押し付けるようにして不知火先輩が抱き締めてくれた。甘い香水の匂いを嗅ぐように、鼻先を首に擦りつけると額にキスをしてくれる。
 何か騒ぐ声が聞こえたけど今は無視。俺の最優先事項は先輩だ。それ以外は二の次。

「……オイそこの使えねぇ役立たず共。これ以上俺達にそいつを近付けんじゃねェ。ついでにお前等は、しばらく生徒会から解任する。目ぇ覚ましたら土下座しに生徒会室へ来い。――理由はわかってるよなァ?」

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