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おかしい。何かがおかしいっていうか、委員長の雰囲気が変わった。さっきまでは殺気立ってたのに……こう、妙に甘ったるい感じ、に。
「い、委員長?」
「……黙ってろって、さっきから言ってんだろ」
ええと、顔が近いです。なんだか身のキケンを感じるんですが、貞操的な意味で。
にやりと笑って近づいてきた強面なイケメンの顔に、思わず後ろに逃げるように体をそる。が、腰に回った腕と狭い用具入れなので簡単には逃げられない。
言葉の意味がわからず、ただ雰囲気に呑まれてがちがちに固まっていると、ふっと緩んだ空気。
「お前が、あの転校生のそばにいるから俺もいたんだよ」
「……え?」
まさかの用具入れの中で告白もどき。ぶわっと顔が熱くなる。
「な、はぁ!?」
「なのにずっとお前は他人行儀だし。敬語のままだしヅラは馴れ馴れしいしで、ちょっとばかしムカついてたが……まぁ、コレで少しは俺の事意識すんだろ?」
「な、」
何言ってんだろこの人は!
恥ずかしい。恥ずかしいっていうか照れる。誰この人。ホントに委員長様ですか。別人じゃないですか。
「こういうのは宣告、っていうのか?お前が一年の頃から見てたんだ。今はまだ全然らしいが絶対、俺をスキって言わせてやるから」
――覚悟しとけよ?
同性の俺でも格好良いと思う笑顔で、風紀委員長は笑った。
俺はこれから先、平和に学園生活を送れないだろう。それを確信してしまって、肩を落とした。
「……転校生が来てから、めちゃくちゃになってるんです。もう、勝手にすればいいです」
「おう、勝手にする」
その言葉通り、委員長はこの日からそれはもう半端ないアプローチをかけてくるようになった。危惧していたファンの方達はなぜか、『風紀委員長を応援隊』という集いを開くようになるが……とりあえず色々ノーコメントだ。
「……委員長」
「なんだ」
「早くココから出たいんですが。色々とキケンを感じるので」
「却下」
「ええー……」
end