大好きです!ハグとキスで伝えます

 しんと静かな広い生徒会室の中。いるのは俺と奈鶴くんだけ。
 真剣な表情で手を動かす奈鶴くんを横目に、ここ最近ずっと働き詰めの奈鶴くんになんとか休憩をしてもらおうと計画を実行中。

「……奈鶴くん、少し休んだら?」
「ん、大丈夫だよー?」

 そう笑いながら奈鶴くんの手は、てきぱきと書類を片付けていく。最初は高い山になっていた紙は今や、半分以下になっていてどれだけ頑張ってるかがわかる。

「ダメ。休憩すんの」

 奈鶴くんの好きなメーカーのアイスティーを机の上に置いて、ひたすらに動く手に手を重ねて止めた。
 役員じゃない俺には、一緒に機密の詰まった書類を片付けるなんてことはできない。けど、根をつめて働き続けたらいつか倒れるから、できる精一杯の手伝いをする。
 奈鶴くんは俺とアイスティーを見てから、ふにゃりと笑った。

「……ん、りょーかい。みぃには逆らえないもんねぇ」

 アイスティー片手に立ち上がると、奈鶴くんに手を引かれて四人掛けのソファーにぽすんと座る。

「みぃ、コレありがとぉ」
「どういたしまして。本当は、ケーキとかでも買ってこようと思ってたんだけど、買い占められてて……」
「買い占めぇ?何それ、この学校にそんな甘党さんがいたのぉ?」
「というか、……三島くんに聞いた話で、その、釣る餌らしいです」
「餌ぁ?ああ……なるほどねぇ」

 甘味買い占め犯は会長達だ。転校生くんを釣るために、彼の好物であるケーキやチョコを大量買いしたらしい。……半端なく馬鹿だ。渇いた笑いしか出ない。

「まぁったくもー……俺はこんなに頑張ってるのにねぇ?」
「うん。奈鶴くん頑張ってる。奈鶴くんのおかげで生徒会が機能してるって、三島くんが言ってた」

 不貞腐れたようにコップに口を付ける奈鶴くんの頭をよしよしと撫でる。
 奈鶴くんは「むー」と唸りながらその手に頭を擦り付けてきた。

「みぃ、ちゅーして。ごほーび!ね?」

 コップをテーブルに置いて、ぎゅうと抱きついてきた。にぃ、と笑いながら額を肩に擦り付けてくる。
 奈鶴くん、猫みたい。

「一回だけー」
「わかった」

 奈鶴くんが頑張ってるご褒美。俺からするキス。
 ぎゅうと抱きついてくる奈鶴くんの肩に手をかけて、少しだけ距離をあける。
 整った綺麗な顔と目が目の前にあって、何回もしたはずのキスにドキドキと緊張した。

「みぃ」
「ん、目瞑って」
「はぁい」

 茶色の目が瞼に隠れて、力が抜ける。ゆっくりと顔を近づけて唇に軽く触れるだけのキスをして離れた。

「ふふー。もう目ぇ開けていー?」
「……まだダメ」

 もう一回唇を合わせてぎゅうと抱きつく。

「みぃ、可愛いー」
「奈鶴くんは格好良い」

 目を開いた奈鶴くんと二人で、顔を見合せて笑うと、抱き合ったままソファーに倒れこんだ。

 俺達以外には誰もいない部屋で、体温を分け合いながら幸せに浸る。

「みぃ」
「奈鶴くん」

「「大好き」」


end

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