鳥は木の下で一休み

 ジンくんがこの城に留まることになってから、約二週間が過ぎた。
 その間に色々とやるべき事を終わらせ、戦への準備は整った。後は火蓋が切り落とされるのを待つだけ。それを彼に知らせると、少しだけ複雑そうに表情を曇らせてぎゅうと抱きついてきた。
 自分を虐げた場所ではあるけれど、それでも争うことになるというのは精神的に辛いものがあるのだろう。


「――……それでね、この間」

 そんな緊張感が高まる中、僕とジンくんは二人でティータイムを楽しんでいた。今日は近くの森で取れた青苺のパイと、ローズティー。

「コレ、おいし……」
「そのパイはエリシャが焼いたんだ。ジンくんに食べて欲しいと昨日から用意してたらしい」
「エリシャさんが……」

 きらきらとした目でパイを見つめ、ふいにふにゃりと可愛らしく緩んだ笑顔になった。

「俺、幸せ、です」
「……?」
「リズがいて、エリシャさんやカエリアさん達は俺のことをまるで弟みたいに可愛がってくれる」

 幸せです。笑いながら零された言葉に、微かに胸が痛む。けれど過去の彼を、どうやっても助けられない。でも。

「……僕も、君が……ジンくんが隣にいてくれて幸せ。僕だけでなくエリシャ達も、この城にいる者達は心から歓迎しているよ」

 ぱちりとジンくんが瞬きする。心底驚いたように。それからさっきの笑み以上に、幸せそうに嬉しそうに笑う。

 ――愛しい。可愛い。……愛しい。

 ゆっくりと流れる時間がこのまま止まればいい。そう思うけど、無理だということを知っている。
 だから、僕は全力で彼を守る。何があろうと、どんなことをしようと。

 フォークを握る手に手を重ねて握った。

「ジンくん」
「ん?」
「ずっと一緒にいよう」
「……うん」

 儚い願い。小さな約束。叶えるのは容易ではないけれど、必ず。

 ――共にいよう。


end

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