王道に×××

 晴れて気持ちの良い風が吹く日。
 こんな日は授業なんて受けずに屋上で昼寝するのが僕的お勧め。まぁ授業がお仕事な生徒だから、基本さぼりはダメ。でも、僕は授業中に廊下を歩いていても、特に何も言われない。
 生徒会には、授業免除という権利が与えられているから。ただし、生徒会業務を行うという前提があっての事だけど。

「……やっぱりココか」
「んー?あ、たかゆきだ」

 ぎぃ、と鈍い音のすぐ後に少し不機嫌な声音。起き上がって見上げれば、朝に会ったきりの生徒会長。大抵僕を見つけるのは彼だ。
 嬉しいやら悲しいやら。見つけてくれるのは良いけど、嫌そうな顔はやめて欲しいなー。

「もうお昼?」
「ああ。食堂に行くぞ」
「……はぁい」

 珍しく差し出してきた手に驚いたけど、ぽんと手を置いた。ぐい、とそのまま引き上げられて手を繋いだまま屋上から中へ入る。
 廊下を歩く間、いくつもの視線が僕たちに注がれるけどそれはいつもの事だし気にしない。まぁ、今日は好奇の視線も混ざってるけど。

「たかゆき、今日は何たべる?」
「適当」
「ふぅん。じゃあたかゆきはAコースね。デザートのパフェちょうだい」
「お前は……」

 深く溜息をつかれた。だってパフェは月替わりで、その月に食べないと次はいつ出てくるかわからない。食べられる時に食べておかないとね。
 のんびりと食堂に向かいながら、くぁ、と欠伸をするとまわりからきゃあ!と黄色の声があがる。目を擦りながらそっちを見ると、ぽやんとした表情の可愛い子たち。
 ひらひらと手を振ると、ぐい、と強く手を引かれた。

「たかゆき?」
「……着くぞ」

 さっきから珍しい行動をするたかゆきが不思議で、名前を呼ぶと誤魔化すように話を変えられた。
 少し不満だけど、食堂に着くのは本当。食堂の入り口が見えてきていた。

 僕たちが入り口に近づくと生徒たちが、道を開けてくれる。いつ見てもびっくりな光景だけど、たかゆきは特に気にした風もなく中へ入っていく。僕も続いて入る。
 とりあえずきゃっきゃと僕の名前を呼ぶ子たちに、手を振りながら生徒会専用のテーブルをめざした。

「……あれ?たかゆき、アレ会計たちじゃない?」

 少し先に会計や書記、補佐の双子が見えた。そっちは生徒会専用のテーブルじゃないのに。珍しい。何かあるのかな?

「ぁあ?……みたいだな。何してんだアイツ等は」
「さぁー?いってみよ」

 生徒会専用の席は無くなるわけじゃないから、少し遅くなってもへいきだし。繋いでいる手を軽く引いて、会計たちのもとへ向かう。

「ね、なにしてるの?」
「「あ、会長と副会長」」
「……」
「こんにちは、副会長」
「うん、こんにちはー」

 近くまで行ってみると、4人の他にも生徒がいた。気になって声をかけてみると、双子と会計が応えてくれる。書記が無口なのは前からだから気にしない。
 それより気になるのは。

「その子、だぁれ?」

 まっくろでもっさりとした鬘を被った生徒だ。大きな眼鏡をしていて、顔はわからないけど覗く作りからして可愛い子なんだろうとは思う。
 その子は僕とたかゆきを交互に見てから、椅子から立って近づいてきた。

「コイツ等の友達か?俺は日比棗だ!アンタ達は!?」
「日比くん?僕は……むぐぅ」

 元気の良い子だな、と思いながら名乗ろうとするけど、背後から伸びた誰かの手によって言葉を封じられてしまう。
 その手を視線で辿っていくと、今まで口を閉じていたたかゆきが不機嫌面にもっさりくんを睨んでいた。

「ひゃかゆひ?」
「んな鬘と眼鏡つけてる見るからに怪しい奴が、コイツに軽々しく話しかけんじゃねぇよ」
「な、人を見た目で判断するなんて最低だぞ!」
「黙れ。食堂で大声を出して喚くなうぜぇ」
「!!」

 鋭く言い放ったたかゆきに、静まりかえる食堂。
 見る見る内に、目の前のもっさりくんがしょげていくのがわかる。それを助けるわけでもなく、楽しげに見る会計たち。
 いまだに口から手を離して貰えない僕は、それを見守るしかなかった。けど、さっきもっさりくんは、会計たちを友達だと言っていた気がする。

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