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 ――僕と慎也は腹違いの兄弟で、生まれた年、日、時間がともに一緒だった。
 父の愛人の子だった慎也。当初、彼は隠されていた存在だったけれど、父が認知をし初めて出会ったのが五歳の時。それから僕らはずっと一緒にいた。何をするにもどこに行くにも、二人一緒。
 僕がイギリスに留学をする、あの時まで。


『何で僕がイギリスに留学しないといけないのさ』
『ふふ、そんなこと言わないの。兄さんは龍我宮の家を継ぐんだから……国際的にならないと!』
『国際的って……まぁ、いいや。手紙と電話』
『うん、必ずする』
『慎也も来ればいいのに』
『……英語、できないの知ってるでしょ?』


 そう言って笑って送り出してくれた時が、彼の笑顔を見た最後。
 電話や手紙のやり取りは、ずっと続いていた。だけどある日を境にその数が減っていった。
 最初は、届いた手紙に友達が出来たと書いてあったから、その友達と遊ぶのに忙しいのかと思っていた。友達に負けた、なんて落ち込みもした。
 時折来る慎也の電話向こうの様子の変化に気付かずに……。

「……慎也、痛かったよね。苦しかったよね」

 ごめん。気付いてあげられなくて。非力で何もできなくてごめん。
 ……ごめんなさい。僕がこれからすることは、きっと君の望むこととは違うけれど……。

「あの学園に存在するすべてに、僕からの贈り物をあげよう」

 種を蒔いた転校生に比類無き罰を。種を育てた愚かな者達には地獄への招待状を。そして、それ等をただ傍観していた者達には恐怖をあげよう。

「慎也が目を覚ました時、君が望んでいた光を僕が作ってあげる」

 だから、すべてが終わったその時に、どうか目を覚ましてください。


(たとえば、僕がそばにいたら)(きっと君は隣で笑っていたはず)


end

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