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あの日から、1ヶ月がたった。アイツがまとわりついてくるのは変わらない。
でも、いくつかの変化はある。
一つ目は、いじめがなくなった。二つ目は、
「隼人、早く来な」
「遅いよー」
少し変わった友達ができたこと。あの時に助けてくれた東原 光輝と、その恋人らしい和風的美人な南 辰弥。辰弥いわく、光輝は外見平凡な非凡というものらしい。それはこの間ので納得できる。
それから、三つ目。
「はぁちゃん、ゆっくりでいいよー」
「うん」
俺にも恋人ができました。
光輝に初めてあった日、連れていかれたのは保健室でも風紀室でもなく、屋上だった。
そこにいたのが辰弥と、そして平岡 望の二人。聞いてみれば、屋上から制裁の現場が見えたらしく、三人の中で一番喧嘩ができる光輝が来たらしい。
なるほど、と頷く僕を手当てしてくれたのは望で。チャラけた雰囲気とは合わず、手当てをしてくれた手は優しく暖かかった。
「はぁちゃん」
「うん?」
「ほら、あそこ」
望が指を差した方向を見ると、もじゃもじゃとその取り巻き。その人たちを見るまわりの目はとても冷ややかな事に、彼らは気付いていない。
「もうすぐでアイツ等は終わりだな」
「ああ」
光輝と辰弥もそっちを見ていたらしく嘲笑混じりに笑っていた。
「ふふ、コレではぁちゃんもお馬鹿さん達から解放されるねぇ」
「……そうだな」
自分達で引き起こした事だから、自業自得、といえる。それでも盲目的に一人を愛する事ができるのは、美徳とも言えると思う。
「だぁめだよ。はぁちゃん」
「わっ」
「浮気はゆるしませーん」
「……違うよ。俺が好きなのは望だし」
「えへー、俺もはぁちゃん大好き」
後ろから抱きつかれて拗ねた声音。くすりと笑ってその腕に手を添えた。
「おいバカップル。気付かれないうちにとっとと行くぞ」
「あ、うん」
「はぁい」
何時も通りに騒がしい彼らから目をそらして、さっさと歩きだした光輝の後を追う。
きっと多分、彼らがココから追い出される日は近いと思う。
この学園に彼らの居場所は無くなったから。彼らの存在を必要とする人がいなくなったから。
「生徒会室に戻ろう」
end