Stupidity

 そろそろだって、覚悟はしてた。一回目は『注意』、二回目は『警告』、三回目は……。

「ぃ、っ」

 脇腹に鋭い痛みが走る。頭に白い光が浮かんでは消えて、ぼんやりとした心地で地面を眺めた。
 放課後に呼び出されて、裏庭に行けば見たことがない人達がいて。その人達は三人とも、いかにもな不良さん方で。

「ったく、何でこんな平凡相手にやらにゃいけねーんだって」
「姫達の命令だ。逆らったら俺達だって何されるかわかったもんじゃない」
「だよねー。ものすっごい面倒だけどー、まぁストレス発散ぐらいにはなるかなぁ」

 嗤う不良三人の声も遠い。視界が黒と白に点滅して、呼吸は辛うじてできるけど後何発か蹴りをくらったら、きっと意識が落ちる。
 意識が無い間に、何をされるかわからない状況。何とか抜け出したいけど、さすがに三人は難しい、か。
 自分の非力さに嫌気がさした。

「ぐ、ぁっ!ごほっ」

 もう一度、腹を蹴られた。こうやって殴られる理由は嫌でも知ってる。
 クラスにアイツが転校してきた時、隣の席でなければ。懐いたアイツを振りほどいていれば。後悔後先たたず、という言葉がぴったりだと思う。

「あーあ、つまんない」
「どうする?殴るだけだと足がつくだろ」
「さすがに、ヤるのはなぁ」

 残った良心か、それとも俺が平凡だからか。殴る蹴る以外はされなさそうだと、少しだけ安心した。

「見えるとこに傷つけんのもダメだってゆーし」
「つーか、反抗もないからつまんねぇ」
「今日はこんぐらいでいいだろ」

 今日は、ね。頭の上で交わされる会話は、どことなく現実味がなくて他人事のように感じる。
 余裕があるのかないのか、自分でもわからない。

「じゃあ、最後に一発いれて証拠の写真「君たち、こんな所で何してるの?」

 ざり、と砂を踏む音と聞き覚えのない声が、場違いに響いた。体は痛みで動かせないから姿を確認できない。

「……っ、」

 擦れた声しか出なくて、その声の主に危険を伝えることができない。コレはただのいじめじゃなくて、親衛隊による制裁だっていうことを。

「倒れてる君は動かなくていいよ。怪我してるんでしょ」
「何だお前。とっとと失せろよ」
「この平凡くんのお友達なわけー?」
「友達ではないけど、僕は君らみたいな馬鹿が嫌いなんだよね」

 ぞくりと、背筋に寒気が走った。暴力を振るっていた奴等ではなく、それに対峙している彼に。
 ゆらりと彼が、動いた。

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