にゃんこのある日

「にゃんこ先輩、写真撮らせてくーださい」
「その手に持ってるものを捨ててから出なおしておいで」

 にっこりと緩い笑顔の平凡に、にっこりと笑みを返す。周りにいるみんなは「また来たのー」なんて苦笑を浮かべた。
 いつものこと、と受け入れられているのは、最近僕の後についてくるようになった平凡、犬井徹(いぬいとおる)。彼の手にはいつも、少し古そうなポラロイドカメラが収まっている。
 だけど今回は、それの他に、もう一つ。白いものがあった。

「にゃんこ先輩、猫耳つけてください」
「僕は猫目 柚(ねこめゆず)って名前がある……」
「にゃんこ先輩には、きっと白いお耳が似合いますよー」
「……僕の話、聞いてる?」

 この子は笑顔と一緒で、頭も少し緩いかもしれない。むしろ変態に近いと思う。
 害の無い顔をしながら、どこから出したのか白い猫耳のカチューシャを僕の頭に乗せようとするのを、隣にいた子を盾にしつつ逃げる。

「た、隊長……一回くらいつけてあげたらいいんじゃないですか?」
「そうだよー。写真撮ったら満足してくれるってー」
「い・や」

 僕と犬井の攻防をおろおろしながら見ていた新人と、副隊長の小鳥が他人事のように言う。普通に撮るならまだしも、猫耳なんて。羞恥で死ねる。

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