笑顔は僕だけに

 ニコニコ笑ってる顔は嫌いじゃない。でも、それが俺じゃない誰かに向けられるのはすっげームカつく。
 そういうの、アイツはまったくわかってないと思うんだ。


 放課後の学園内。補習が思ったより長引いて、校内から出る頃にはすっかり暗くなっていた。
 先に帰るようにメールをしたから、アイツはもう寮に帰っているはず。鞄を抱えなおして、門を目指した。校門から出れば、数分で寮につく。
 だらだらと帰路を歩いていると、校門に人影が見えてきた。

「?……菜月、か?」

 金と赤に染めた髪と、缶バッチがところせましとつけられたカバンは菜月のトレードマーク。遠目から見ても誰だかわかる。
 アイツ、何をやってるんだ?
 菜月も俺に気が付いたようで、軽く手をあげた。

「何してんだ?」
「おーでむかえー」
「ふぅん、早く来るといいな」

 出迎え、という言葉にずきりと胸が痛むけどそれを無視する。俺には、関係ない。軽く手を上げ返して、菜月の前を通ろうと、した。

「ちょーっと待った。何、先に帰ろうとしてんのー?」

 腕を捕まれて足を止めさせられた。反射的に菜月を仰ぎ見る。

「何って……誰かの出迎えなんだろ?」
「誰かって……、目の前にいる伸行以外に、誰を迎えなきゃいけないわけぇ?」



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