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 もじゃもじゃの言葉を遮り、会長様が僕へと手を差し出した。

「暁、来い」
「はい」

 低く色気のある声で名前を呼ばれれば、逆らえるはずもなく。ふらふらとした足取りで、彼に向かう。
 けど、辿り着く前に黒いものが目の前に立ちはだかった。

「ま、待てよ!!何だ?どういう意味なわけ!?」
「オイ……」

 きゃんきゃんともじゃが騒ぐと、会長様の眉間に皺が寄る。その表情も格好良いと思うけど、皺が残るのは嫌かもしれない。

「会長様、早くおじいちゃんになるのは嫌です」
「……は?」

 意味がわからないと言うように首を傾げる会長様に、指を眉間にやると合点がいったように表情を柔らかくする。その様に、この部屋にいた人達が驚いたように息を飲んだ。

「暁」

 もう一度呼ばれる。ぽけっとしたまま動かなくなったもじゃの横を通り過ぎて、伸ばされた手に手を乗せる。引かれるままに近付けば温もりに包まれた。

「コイツは俺のものだ。心も体もな。その暁が親衛隊の存在を可としている。だから親衛隊という存在の可否の決定権は、俺にねぇ。だがな、暁の決めた事に文句つけんのは俺に言うのと同等だってこと覚えとけ」

 わかったか。否を許さない凛とした力強い声が耳元で紡ぐ言葉に、ああ、僕って愛されてるんだ。とか再認識してしまう。


 ――会長様と僕は、いわゆる恋人同士だ。まわりには言っていないけど、親衛隊の子達は知ってる。みんないい子で、祝福してくれたり「会長様に虐められたら言ってください!僕等が会長様を叱りますから!」とかまで。
 はっきり言って、もじゃを虐めた子達は会長様の親衛隊にはいない。むきーって怒ったりもしてたけど、「だって暁様が怒らないからですぅ!」とか言っちゃって。もう本当に可愛い。そんな心配はいらないよ、って言ったら、渋々だけど見守りの態勢に入ってくれた。
 まぁ、だから僕をここに呼び出すのは見当違い。現に会長様はもじゃがスキなわけじゃないし。僕が焦ることもなければ、怒る必要もない。

「ええーと、つまりはぁ……会長とその親衛隊長は恋人?」
「そう言ってんだろーが。会計、お前は何聞いてたんだ」
「ええー?」

 僕を膝抱っこしながら、会長様は会計に少し馬鹿にした笑みを向けた。困ったようにする会計は、隣にいた無口な書記に目配せしたけど、やっぱり書記も困ったように首を傾げた。

「な、意味わかんねーし!なんで恋人なのに親衛隊の隊長なんかしてんだよ!!」
「……可愛いから?」

 そう言うと、阿呆面してもじゃが黙ってしまう。
 僕が可愛いもの好きなのがそんなにダメなのか。失礼なもじゃだな。

「暁は可愛いものが好きだからな」
「みんな、ふわふわきらきらしてて可愛い」
「俺は?」
「……会長様は、別」
「そうか」

 ぎゅ、と抱きついて肩に顎を乗せると頭を優しく撫でられた。その手つきにふにゃりとしてしまう。

「会長様」
「ん。お前は寝ちまえ。昨日は激しめだったからなぁ」

 顔が見えないからわからないけど、絶対にやらしい顔してる。会長様の表情は時々18禁なんだ。

「……昨日も、です」
「は、お前が乱れまくるのがいけねぇ」
「僕のせいですか」
「おう」

 すぐさま肯定した会長様に、怒りはなくただ呆れてしまう。何様ですか俺様ですか、すみません。
 僕の中にはもう会長以外の存在は無くなっていた。ただ、睡魔と会長の体温だけが今の僕を支配する。

「……ふぁ」
「ったく、」

 おやすみ。背中を軽く叩かれながら言われた言葉に返事をする前に、僕の意識は夢の中へと旅立った。


end

(オイ、全員静かにここから出ていけ。暁を起こした奴は潰す)((はぁ!?))(ええー?)(……)

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