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 僕が思わぬ話におろおろとしていると、晃樹さんが二人を止めてくれました。その横で十市さんが「それで?」と話を向けてくれます。
 これは言わねば後々に何か大変なことが起こりそうだと、内容に少し恥ずかしくなりながらもお話をしました。

「おおー?俺が兄ちゃんかぁ」
「お、お母さん……」
「……そうか、父か」

 サンシャサンヨウのお返事を頂きました。十市さんは嬉しそうですが葉月さんと晃樹さんは微妙なお顔です。年下とは言え、二つしか違わない僕にそんな事を言われれば嫌な気分になるのも当たり前ですね。
 一人肩を落としていると、つい、とセーターを引かれます。つられてそちらを見ると、葵さんが自分を指差して「俺は?」と首を傾げられました。

「葵さんは……ええと、お隣のお兄さん!」
「……隣か」
「はい!お隣に住んでるお兄さんです」

 一緒に遊んでくれたり、会えば頭を撫でてくれる優しいお兄さんです!そう言って笑うと、葵さんは少し意地悪そうな笑みを浮かべます。見たことのない表情に驚いて、ぱちりと瞬きをすると「それなら」と口を開いてぽいっと爆弾を投げていかれました。

「純が小さい頃に、きっとそのお隣の優しいお兄さんに『お兄さんのお嫁さんになる』とか言ってそうだよな」
「ショタコン宣言?可愛い弟は守るよー」
「息子なら変態からの保護は義務だよね」
「防犯ブザーを買いにいくか」

 僕がぽかん、としていると十市さんにひょいと抱き上げられ葵さんから四つ離れた場所に座らされました。僕と葵さんの間に三つ椅子が空いて、僕の隣に葉月さん、真ん中に晃樹さん、葵さんの隣に十市さんが座りました。

「おい、お前ら……」
「総長は俺とお話合いしようねー」
「山下、何色が好きなんだ?」
「スプレーも買ったほうがいいかな」
「い、色は青が好きです!スプレー、ですか?えと、何に使うんでしょうか?」

 そんな、旗から見てとても混沌とした状況に終わりを告げてくれたのは思わぬ方でした。

「ほら、君たち。少し落ち着きなさい」

 それはマスターさん。ことんことんと音をたてながら、それぞれの前に置いてくれます。
 僕の前には白いふわんとしたクリームがたっぷりと乗ったショートケーキと、くるりと巻いたクリームに飾られたココア。

「ふぁー、美味しそうです!いただきます!」
「どうぞ、召し上がってください」

 少し遠い場所から聞こえる不穏なやり取りは右から左に流れ、雪のように白いふわふわとした甘いケーキを堪能する為にフォークを手に取りました。


end

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