▼ Sweet Snow
「葵さん!」
「純か。よく来たな」
学校帰り、教えて貰った通りに歩いていけば小さなお店。少しファンシーなそこのドアを開くと、カランと鈴が鳴りました。顔を覗かせると、葵さんが奥のカウンターに座っているのが見えます。
僕に気が付いた葵さんに手招きされて近寄っていくと、ワシワシと頭を撫でてくれる手にふわふわとしてしまいました。されるがままにしていると、抱き上げられて隣に座らせてくれます。「ありがとうございます」と笑うとまた大きな手で撫でてくれました。
「ほら、好きなの頼め」
「はい!」
渡されたメニューにはたくさんのスイーツが並んでいてどれも美味しそう。うんうんと悩んでいると、またドアが開いたのかカランと鳴りました。そちらに顔を向けると見覚えのある方達が三人、お店に入ってきます。
彼らは僕と葵さんに気が付くと、それぞれ話しかけてくれました。
「おー、チビちゃんじゃん!久しぶりー」
「総長、また甘やかしてるの?」
「あんま甘いの食べてると虫歯になるぞ」
順に、十市さん、葉月さん、晃樹さん。三人とも葵さんのチームの人たち。
十市さんはゲームが好きでよく対戦ゲームで遊んでくれるお兄ちゃんみたいな人。葉月さんは優しいけど、怒ると怖い少しお母さん。晃樹さんはあんまり話さないけど、僕の好きなお菓子をよくわけてくれる……お父さん?そしたら葵さんはなんだろう。
「チビ?どしたー?」
「あ、いえ!なんでもないです」
一人で想像して楽しんでいると、十市さんがひらひらと僕の目の前で手を振りました。はっとすると、葵さんも首を傾げて僕を見ています。
さすがに家族ごっこみたいな想像をしていることは言えません。えと、どう誤魔化しましょう?
「決まらないのか?」
「へ?あ、いえ!イチゴのショートケーキと、アイスココアでお願いします!」
「ああ。……マスター」
「はい。酒井君達はいつものでいいかな?」
「俺もー!」
「いつもので」
「……今日は氷多めのアイスティーで」
「はいはい」
ニコニコと笑うカフェのマスターさんは、手際よく僕達が注文したものを用意してくれます。その間に僕は葵さん達による追求を受けていました。
「それで、なにを悩んでたんだ?」
「いえ、悩みがあるわけじゃ」
「そしたら何だ?」
「夏だからね、変態にでも会った?」
「「よし、抹殺するか」」
「え?え?」
「総長、葉月、頼むから落ち着け。山下が困ってるだろ」