Romio&Jurietto

「つーわけで、今年の文化祭は演劇だ!やるのは定番中の定番、ロミオとジュリエット!だぁがしかし!ロミジュリを普通にやるのは面白くない!お前ら、何か出せ!!」
「「まかせろ隊長ー!!」」

 無駄に熱気に溢れた教室。司会は文化祭実行委員の鈴木くん。中々に力が入っているらしく一つ一つの言葉の最後にビックリマークがついてると思う。
 そんな鈴木くんは悪役のように高笑いをしながら、ガッガッと音をたてて黒板に次々にクラスメイトが挙げる提案を書いていく。鈴木くんもだけど、俺のクラスは祭り好きが集まっていると言っていい。去年も似たような感じでトゥインクル☆執事・メイド喫茶とかいうのをやってたし。

「うっし、このくらいだな。野郎共、やりたい物に挙手しやがれ!」
「「ラジャー隊長!」」

 ノリがいいなお前ら。窓際の一番後ろの席でぼんやりとしていると、前の席の奴が振り向いた。

「なぁ、屋代はどれにする?」
「んー、無難に脚本改変ギャグとか」
「俺はロミジュリ交代にするお」
「その話し方やめれ」
「あいあい」
「よっし聞けー!まずはギャグやりたいやつ!」

 そうして決まったのが『ロミオとジュリエットの入れ替わり』だった。意味がわからない。
 まぁ、とりあえず俺は裏方に希望を入れよう。

「ふむふむ。まぁこーなるとロミオは決定だな!屋代!!お前がロミオだぁ!」
「……は?」
「なんだ、聞いてなかったのか?背の順で小さい奴がロミオで、でかいのがジュリエットだ。却下は受け付けない。文化祭中は俺がルールじゃー!!」

 いつの間にそんなことが決まってた。理不尽な言葉に呆然としていると前の席の奴が「頑張れ」なんて他人事のように笑うから、思わず椅子を蹴った。俺は悪くない。
 だけどもまだ俺の災難は続いていた。

「でだ。背の高い奴がジュリエットなんだが……今日も清く正しくサボりか」

 俺を含めてクラスメイトの幾人かが空いた席を見る。あいつがジュリエットとか寒気しかしないんだが。しかも相手が俺とか何のコントだ。

「ふむ、仕方ない。おいロミオ、ジュリエットを捕獲して来い。生きていればやり方は問わん!」
「……了解、隊長」
「無事に帰還しろよ!さて屋代が久住を捕獲してくる前に夏休みの予定決めるぞ!文化祭はすぐだからな!休みはないぞぉ!!」
「ついていきます隊長!」
「休みたいです隊長!」

 成りきっている鈴木にため息をついて席を立つ。行き先なんて知らないけれど、あいつの仲間の溜まり場なら有名だ。そこに行こう。いなかったら知らね。
 クラスメイト達の見送りを背に受けて、のっそりと教室を出た。

* * * * *


 そうしてやって来たのは校舎裏側の体育館脇。そこには予想通りの面子が揃っていた。

「そこのサボり共、久住知らね?」
「あ、ひさちゃんだ。ciaociao!」
「無駄に発音がいいな水色」
「俺は苫小牧ですー!いつになったら覚えてくれんのさ」
「黄色と紫もいるのか」
「うぃー」
「……ん」
「スルーは辛い!」

 しゃがみこんでお菓子をつまんでいる三人に、その輪に加わってじゃがこを食べる。水色がうるさいが気にしないのがスルー力。

「じゅーいちなら、あっちで寝てんぞ」
「マジでか。面倒だ」
「つか珍しいね、ひさちゃんが授業中に来るの」
「ん?ああ、聞いて笑え」

 拗ねていた水色が持ち直したのか話に加わる。他の二人も水色程ではないが気になるのかじ、と見てきた。それに対してにやりと笑うと、実はな、と探しに来た理由を簡単に説明してやった。

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