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 想いもよらぬとこで選ばれた意味がわかった。なるほどな。あいつらの家以上の奴じゃないと対処ができないってことか。だから、俺が顧問なのか。

「あー、なるほどな。なんとなくお前が考えてることわかった」
「話が早くていいな。あんたを指名してよかったよ」
「へいへい」

 つまりは、見境のなくなった奴等が自分たちに歯向かう生徒や教師に対して何かしらの行動を起こすのは分かり切っている。それならば手出しができない相手であれば、人数が多かろうがどうにかできるのではないか、ということか。
 東原の家や南の家はそれぞれその道のトップ。平岡に関しては本人は不愉快過ぎるようだが、会長の家の本流にあたる。どうにでもできるだろう。それに俺は次男とはいえども、ある程度の影響力がある家の出だ。
 なるほど、と一人で頷いていると東原が少しぼんやりとした表情で楽しげな声が聞こえてくるキッチンを見る。

「本当なら、隼人はもっと早くに救われていたはずなんだ」
「……うん」
「だから、」
「東原?」
「思い切り殴るぞ。フルで殴る」
「あの人たちのプライドを折っちゃおうね」
「兼がね同意だが、警察沙汰にはするなよ?」
「そんなものどうとでもなる」
「ね」
「胃が痛い……」

 少し前のしんみりとした雰囲気は数秒でさっくりと消えさった。
 ツキツキと痛む腹を撫でながら、ああでもこいつらもこいつらで浅田に何かしらの罪悪感があるのかと考える。
 もう少し早く見つけていたら、もう少し早く気付いていたら。仮定の話ではあるがそう思わずにはいられないのだろう。

「お待たせしました」
「お菓子はジャーキーとスルメイカでいいよねー?」
「……お菓子?」
「なんだ、そのおつまみチョイス」

 朗らかな声と一緒に現れたのは蔦編みの籠につまみ類を入れた浅田と、ジュースのボトルと一緒にコップを人数分お盆に乗せた平岡の二人。それにより東原は「詳しくはまた後で」と話しを区切った。

「ポテチとかあったよね?」
「いや、先生がいるからこれでいーかなーと」
「酒があればな」
「……お酒ならありましたよ」
「お馬鹿会長たちが隠してたみたいだよー。いる?」
「いる」

 そうして、俺の手元にだけ追加された酒を片手に乾杯の音頭を取る。
 宴会の如く賑やかに行われた休憩は、それぞれの企みを横に置いたまま下校のチャイムが鳴るまで続いた。

「先生、あの三人と一緒に何か企てたりしてません?」
「……」

 飲み会もどきの際に、平岡の隙を見つけて寄ってきた浅田に酒の勢いで危うく口を滑らしそうになったのは秘密だ。


end

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