Settlement

「はぁちゃん、これとかどう?」
「あ、花?うん、華やかでいいね」
「これは?」
「……WiiにPS3?」
「Xboxもあるよ」

 昨日まで誰もいなかった生徒会室は、今日、久しぶりに人を迎えた。
 ガタガタと音をたてながら、自分たちがやりやすいように配置を変えて色々と持ち込んでは置いていく。
 その様子をソファーに座ったまま眺めていた生徒会顧問は、コイツらで大丈夫なのか、と心底不安を抱いた。確かに四人のうち三人は個性が濃い。ある程度のことじゃ同時ないし、生徒会を回すことも可能だろう。何せ、前生徒会には秘密に行われた投票で一位から三位までを総なめにした程だ。
 残った一人も、いままでのことを考えれば適任と言えば適任だろう。

「これは必要?」
「マイクなんてどこから出したの」
「引き出しに入っていた」
「はぁちゃん、お菓子もあるよー」
「ありがと、望」
「……お前ら、頼むから少しは自重してくれ」

 だがしかし、現在のこの状況を見て誰が大丈夫!と太鼓判を押せるだろうか。いいや、押せはしない。少なからず俺は押さない。頭を押さえながら、室内が着々と変わっていくのをどこか他人事のように眺め見る。
 どこから持ってきたのか大型テレビ。それからゲーム機の本体が数種類と、ボックスに入れられた無数のゲームカセット。以前は高級菓子ばかり入れられていた冷蔵庫には、今や所狭しとジュースや菓子類が次々と詰められている。

「これでも自重してるんだけどね」
「光輝にしては、だけどね」
「ん」
「もう少しどうにかしてくれ……」
「光輝には無駄な説得なんだから諦めなよー」
「先生、頑張ってください」
「そうか、ここに俺の味方はいないのか」

 四人にそれぞれ見放され、少しやさぐれた気分でいると浅田が苦笑しながら「荷物の整理も終わりそうですしお茶にしましょうか」と備え付けの小さなキッチンへと向かった。その背を追うように平岡が「待ってー!」と続く。犬の尻尾と耳が見えたのは気のせいだろうか。

「……それにしても、浅田もそうだが平岡も変わったな」
「飼い主が見つかったからね。これで少しは落ち着くんじゃないかな」
「そうだね、最近は喧嘩もしなくなったし、随分と大人しくなったよね」

 ガタリと音をたてて会長席に座った東原が指を組んで頬杖をつく。尊大な態度をほのぼのと見る南は凄い奴だ。

「隼人が暴力苦手だから。必然的にそうなる」
「……なるほどな」

 確かに浅田は暴力が苦手だろう。話を聞いた限りじゃ、三人と一人の出会いは親衛隊の制裁現場だったらしい。その発端である生徒会の馬鹿共と前任の顧問、それから転校生に歯には虫唾が走る。アイツラは今も好き勝手にしているらしいが、こいつらが生徒会の役員になったと聞いたらどう感じるのだろうか。
 言ってみたい気はしたが、東原と南に何か考えがあるらしいから俺は特に動こうとは思わない。万が一ヘタして何か東原たちに不利益が齎された場合、俺は無事ではいないだろう。ああ色々と考えると面倒だ。どうして俺が顧問に選ばれたのか。

「それでだ。顧問先生様」
「微妙な呼び方は止めろ。……なんだ?」
「とりあえず隼人には気づかれないように前役員と転校生を処分しようと思う。望は隼人の護衛としてつくから動けるのは僕と辰也。それからアンタだ」
「……ん?」
「辰也の親衛隊は、家柄的に動かせない。僕の下僕もね。あいつら、家の価値だけはでかいからな……」

[←前へ 戻る 次へ→]


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -