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「何かあったとき以外は自宅待機でいいって言われたから」
「自宅待機?」
「そう。登校拒否だから」
さらりと言われたことに驚いたけれど、でもこうして校内にいるからある程度は授業に出ているのかもしれない。推測をして、いつの間にか離れていた彼の腕に、自分の腕を回して抱きついた。
彼を挟んで向こうに、同じようにしがみついているこーちゃんがいる。
なんだか新鮮な感じがした。いつもはすぐ隣にいるのに、誰かを挟んで見るのは不思議な光景だった。僕等はそのまま話をしながら寮までついていった。
その日を境にして、何度か部屋に突撃をしかけて何度目かから、ドアをノックすれば確認もせずにドアを開けてくれるようになって、専用のおやつも用意してくれていた。
そうしてわかったのはさっちーが本当に登校拒否してたこと。行くには行くらしいけれど途中で登校するのが面倒になるらしい。伯父さんは呑気に大丈夫と言っていたけど、もしかしたら留年するんじゃないかと心配もした。
でも、ちゃんと進級して(出席がわりのテストを受けてたらしたい)、その年にはさっちーの弟くんも入学してきた。
弟くんの話はさっちーの部屋に行くたびに写真を見せられながら話を聞いていたので、はじめて会った割りには他人と言う気がしなかったのは仕方ない。
そして、その数ヶ月後に弟くんに友達ができたわけで。
「っていう流れ。オッケー?」
「聞いてる?バ会長」
「……聞いてる」
ぐったりとした様子の生徒会長の両隣に座り、その顔を覗き込んで確認をとると疲れたように相づちを打たれた。
自分で聞いてきたくせに、疲れてるとは何様かとほっぺたをこーちゃんと一緒につねれば悲鳴があがったけど気にしない。
「あ、のなぁ……。俺はどうしてあいつが裏の代表になったのかを聞きたかっただけで、お前らの馴れ初めなんざ聞いてねぇよ」
「何で代表になったかは理事長に聞いてよ」
「あれじゃない?僕等のいびりに耐えられそうだったとか?」
「……いびりって」
「その当時ぐれてたから」
「僕等に文句つけようものなら調べあげて効果的な方法で潰してたしね」
ね、と見合わせて笑うと僕等の間から深いため息が聞こえてくる。
あまりため息ついてると幸せが逃げるよ。って言っても会長の幸運は使い果たされちゃったかもだけど。
理事長曰く、責任はきちんと果たしなさい。だそうだ。
生徒会と風紀委員会は解散したけど、さっちーによる恐怖で理性を取り戻した会長と僕等によるお仕置きで現実を知った風紀委員長だけはまだそれぞれの役職についてる。
他の委員たちは今はむっちゃん、というよりはさっちーの駒使いに『喜んで』なった。さっちーの「寮の廊下を今日一日で綺麗に」とか「校庭100周ってできる?」とかを『幸せそう』に『喜んで』やってる。
転校生に関してはさっちーがなにかした後、理事長が親元に送り返したらしい。ちなみに転校生と僕等ははとこにあたるそうだ。やだね、あの転校生と親戚なんて。会ったことなかったけど。