崩壊の果ての走馬灯

 城に放たれた火は最上階にまで到達していた。夜だというのに辺りがはっきりと見える程、明るく照らされた城内に残されたのは俺一人だけ。
 この城の王様やその周りの人たちは当に降伏をしている。一緒に行こう、と言われたけど仁に手を上げていたアイツ等と行くのは嫌だった。それだけしか頭の中に浮かばなかった。
 外から漏れ聞こえた声によれば、降伏した人たちの中で、王様はすぐに処刑されたらしい。王子たちがどうなったかは、ここからではわからなかった。でも、きっと手酷い扱いを受けるだろうことは明白だ。
 なんたって戦いの相手であるリーズヴァルドは、アイツ等が手を上げていた仁を、事の他気にいっていたようだから。

 仁に拒絶されたあの日、気付けばこの世界に来てから見慣れた部屋にいた。
 口を聞くのも嫌だったけど王子たちに聞けば、どうやら魔法で送り返されたらしい。そのすぐ後に決裂状が届いた。
 それからはあっという間で、気が付けば人数や装備などで圧倒的に優位にあったはずの戦いは劣勢になっていて、中に残ったものを炙り出すために火が放たれていた。

 ――どうしてこんなことになったんだっけ。どうして仁は隣にいないんだろう?
 ぼんやりと記憶を手繰りながら、親友だったはずの仁に思いを馳せた。
 確かあの日はいつものように二人で遊んでいたんだ。学校帰りに、丁度新作のゲームの発売日で、仁を誘って一緒に店に行こうとした。公園から抜ければ早いからって、そこを通りぬけて、公園の出口から一歩出たそこは別の世界だった。
 目の前には知らない人ばかりで、言葉も満足にわからなかった。でも仁と一緒に頑張って覚えて、仲良くなって、俺がこの国の「英雄」だって言われた。英雄はその国を救うために呼ばれる存在。だから、俺が頑張ってこの国を助ければ二人で戻れるんだと思ってた。それから、それから。
 酸欠かそれとも精神的なもののせいか頭の中が霞んでいく。立ちつくしていたはずの体はいつの間にか床に膝をついていた。

(……許してくれなくても、また、会いたかったな)

 俺のせいでこの世界に連れてこられてしまった親友。俺のせいで、傷付けられていた、友達。
 悲しい、寂しい、痛い、辛い、どの言葉も向けられず、側にいることを拒絶された。自業自得なのはわかっているけれど、それでも元の世界にいた時のことを思い出せば、浮かんでくるのは常に隣で笑って居てくれた仁のことだけだった。

 ――どこで、どうすれば、親友はまだ隣にいてくれたんだろう。
 ずっと考え続けてるその答えは、意識を失う瞬間まで、見つける事ができなかった。

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