神子とタラットリアの騎士

 とある農業を営んで暮らしている小さな名前の無い村。そんな村に、十も満たさない少年がおりました。
 少年は村の近くで倒れていた所を保護され、そのまま村の仲間として暮らしていました。この辺りではさして珍しくない黒目、黒髪の少年は見た事のない異国の服を纏っていました。しかし、そんな些細なことと気にせずに村の人々は小さな少年が記憶を失くしていることに大変心を痛め、元々子供の少ない村だった為か村の皆で育てていくことにしました。
 最初の頃は怯えて話も出来なかった少年は打ち解けていくにつれて、徐々に笑顔を見せるようになりました。そんな少年に村人たちは真綿で包むように大切に大切に育てました。

 そして、少年が村に来てから数年の月日が経った頃。王都タラットリアにて巫女によりとある神託がなされていました。『神に愛されし神子がこの国のどこかに召喚されている』と。即位したばかりの若き王は、まず側近たちに神子を探すように命令を下しました。
 側近たちは騎士や魔術師、錬金術師や精霊使いなど様々に力を持つ者たちに手を借りて国中を挙げて神子を探しました。まずは王都。そして周りの町や村。徐々に手を広げていき名前さえも無い村々を探し始めました。

 ――記憶を失くした為に自分を神子と知らない少年と、王の命令により王都から遠い遠い僻地まで探しに来た騎士のお話を致しましょう。

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