僕とあなたの境界線

 ちょっと自分中心だけど、いざという時は頼りになって威風堂々とした会長に、いつも笑顔で、わからない事があると丁寧に優しく教えてくれる副会長。
 それから、見た目派手でゆるーい感じで時々何を言ってるかわからないけど、頭を撫でてくれる手が優しい会計。無口で無表情で近付きがたいけど、甘いものを食べた時の嬉しそうな顔が可愛い書記。
 後、忘れちゃいけないのがいたずら好きであまり仕事をしてくれないけど、無邪気で人懐こい双子の補佐。
 そんな人たちに囲まれながら、平凡な僕が制裁やいじめを受ける事もなく補佐の仕事ができたのは、他ならぬ生徒会の親衛隊のおかげ。

 ――それに気を緩め過ぎたのか。まさか、一番知られたくない人に見つかるなんて……。


「……晴耶、大丈夫か?」
「はい。大丈夫です」

 埃のついたシャツを手で払いながら、心配そうにかけられた声に頷く。
 少し指先が切れていたけど、そんなに痛みがあるわけではなく血もあまり出てなかったので放置。

「何度目なんだ?」
「何がですか?」
「この現状が、だ」

 現状、というのはでかい図体をした馬鹿共の惨状の事だろうか?
 首を傾げていれば、ため息をつく音。

「晴耶。何で言わなかったんだ?」
「僕が負けるわけがないので、特別知らせる事でもないと判断しました」
「……この馬鹿が」

 乱暴な口調とは反対に、優しく頭を撫でられる。
 それが気持ち良くて目を細めると、ぎゅうと抱き締められた。

「僕の仕事は、こういう奴等を一掃する事ですよ?」
「元々の仕事はそんなんじゃねぇだろ。俺はオマエにこんな仕事を与えた覚えはねぇ」
「……、こういうのは先代から次の人へ直接、かつ内密に継がれていきます」
「次……、なるほど。先代っていうのは、オマエをよく構ってた高杉か?」

 YES。頷いて詰めていた息を緩く解く。そのまま寄り掛かれば、会長が頭を撫でてくれる。
 良かった、まだこの人に嫌われてない。

「オマエ等が一緒にいたのは、やり方だのなんだのを引き継ぐ為か」
「はい。排除の仕方、その後の対応も教えてもらいました」

 広い背中に腕を回しながら問いに答えると、忌々しげな舌打ちの後に体に回る腕に力が入った。

「……あの野郎、次会ったら殴り飛ばしてやる」
「ダメ、です。高杉先輩には勝てないです。会長が怪我するくらいなら僕が行きます」
「馬鹿」

 くすりと笑った気配に顔をあげると、会長は優しく笑みを浮かべていた。

「お前が行っても俺がついていくに決まってんだろーが」
「……でも、」
「なんだ。俺が弱いとでも?」

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