▼ 「可愛い生徒の頼みだよ?」
ヴヴヴと、鈍い機械音。
それは携帯のバイヴ音ではなく、丸くてピンク色をしたいわゆる『大人のおもちゃ』。
「……結城、それ、なんだ」
「ふふ、ローターです。可愛くないですか?」
バイヴ音を響かせるローターをぺろりと舐めて笑う。そうすると、先生はさっきまで僕を翻弄してた人とは思えない程に真っ赤になった。
「ゆ、ゆうき……頼むから、こう、何だ、オブラートに包んだりとか……」
「いつも包んでるじゃないですか」
「どこがだ」
速答しなくても。
一度電源を止めて、それを先生へと手渡す。恥ずかしそうにしながら受け取ると、初めて見たのか手のひらでころりと転がして眺めている。
「で、先生。お願いがあります」
「……嫌な予感しかしないんだが」
「いやだな、可愛い生徒の頼みじゃないですか」
ため息をついた先生は、それでも苦笑を浮かべると強く抱き締めてくれる。
「そうだな。……可愛い、恋人の頼み、だからな」
言ってみろ、と低く耳元で囁かれて笑いながら誘うように言葉を吹き込んだ。
END