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 寸でのところで義父が拾ってくれたが、あの人がいなければあのまま僕は死んでいただろう。その点は感謝をしなければ。

「それで、仕事内容の説明は?」
「今から僕の部屋で。準備はその後でして」
「ん、じゃあ今からヨウが俺のボス?」
「むしろリーダー?」
「なるほど。なら俺は隊長で」
「意味がわからないよ」

 そんな軽口を叩きながら僕の部屋へと戻る。道すがらカーティスが気遣わしそうな目を向けていたのは気付いたけど、それがどういうことかはわからなかったから気が付かないフリをした。


* * * * *


 義息が部屋から出ていくのを見届けると、今しがたまでアイツがいた場所に手を添える。まだ温もりが残っているシーツに、荒む心が僅かに治まった。
 今回の仕事は依頼ではなく私情によるもの。ヨウを拾ってからいくつかの季節が過ぎ、気が付けば五年の時が経っていた。息子の年は一三から一八になり、自分は三十になった。このまま何事も無ければそれはそれで良かったが、今の状況はそうも言っていられない。
 王都に『異界の子』が現れた為、国をあげて忌み子狩りが行われると部下から連絡があった。その王都にヨウが行くのは自殺行為に等しいが、それでもこの場所にいるよりかは安全だ。
 何せ、俺がヨウを養子にとったことはこの世界では知らぬ奴はいないから。この商団にも王都の奴らが来るだろう。守り切る自信はあるが、対策は取っておくべきだ。
 カーティスには先ほど、廊下で会った時に狩りのことを教えていた。王都に行けばヨウも必然的に知ることになる。
 この本部から王都までは急いで二日、行って帰ってくるには四日はかかるはずだ。ヨウが知って戻ってくるまでに事は全て終わらせる。今までの実績、実力などを総合して考えれば不手際がなければ簡単なことだ。

「息子一人、守れないつーのは親として風上にもおけねぇしなぁ」

 ほんの遊び心で引き取ったつもりで、だが今は親子として、兄弟として、理解者として、それら以上のものとして、ヨウの存在は必要不可欠なものになっていた。異界の子がなんだと、そんなものの為に差し出すなんざできるわけがない。
 アイツを少しでも傷付けるようなら、持てるすべてで潰してやる。自分にはそれが出来る力があり、立場にある。

「王都なんざ興味は無かったが、そういうことなら遠慮なんかしねぇ」

 ――俺が抗うなんて、思いもしないだろう?なぁ、ヴォルフ。

 言葉には出さず胸の内で、今は王の椅子に座ってふんぞり返っているだろう実弟に語り掛けた。


end

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