オハナミビヨリ

『お花見の季節ですね。全国で開花の……』

 ニュース番組を見ていたら、リポーターが満開の桜の下でにこやかに告げていた。頭に浮かんだのお花見と、団子。あんまんもいいな。

「お花見しに行こうか?」

 振り返ると、マグカップ片手に、にこやか笑顔な御門さん。

「……行きます」


* * * * *



 アパート近くにある小さな公園。そのまわりを囲むように桜が居座ってる。
 春休みってこともあってか、ちびっ子たちが全開で遊びまわって賑やかだ。

「ここで良かったの?」

 二人で並んでベンチに座りながら、そんな光景を眺めているとふと隣から声がかけられた。
 首を傾げながらそっちを見れば、困ったように眉を下げた御門さん。

「うん。だって、にぎやかだし……日当たりもいいし」

 それに、隣には御門さんがいる。そんで御門さんの反対側には、コンビニで買ったペットボトルとお団子。それからお饅頭。上を見上げれば、満開の桜。
 これ以上求めるものはないじゃないですか?

「……千里くんは、時々、凄くたらしになるよね」
「えー」

 ホントの事なのに。
 団子を咥えながら御門さんを見ると、珍しく顔を真っ赤にさせて明後日の方向を見ていた。うん。

「御門さんは、いつも格好良いけどたまに可愛いですね」
「!」

 おお、首まで赤くなった。いつもは俺が御門さんのする事で慌ててるから、なんか新鮮な感じだ。
 団子を置いて、自分の顔が赤いのを理解してるからか、顔をあげない御門さんの腕に触れる。びく、と反応されるがこの際無視だ。

「……御門さん、帰ろ?」

 まわりが見て不自然じゃない程度にくっついて、その耳元でささやく。

「な、せっ?!」

 途端に思いきり慌てて、ジュースをひっくりかえした御門さんが楽しかったです。


 ――わかったこと。
 お花見とか特別、何かをしてもしなくても。隣に御門さんがいれば、とりあえず俺は満足だ。


end

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