+α

Case?:不良と一緒!

 教室に向かおうと校舎を繋ぐ渡り廊下を歩いていると、近くの使われていないはずの教室から怒鳴り声とガラスの割れる音が聞こえた。俺は迷わず携帯で風紀に場所をメールで送り、音のしたほうへと急ぐ。
 近頃俺の仕事を増やしている馬鹿共か、それともリンチか下道か。

「……なんだ、不良の喧嘩か」

 勢い良く教室のドアを開けると、そこは死屍累々。赤緑黄色にオレンジ、色々な色をしたいかにも不良!な格好をした生徒が床に突っ伏していた。
 そしてその中央には。

「よう、亮佑」
「……言っておくが、喧嘩を売ってきたのはコイツ等だからな」

 銀髪赤目の幼なじみが立っていた。亮佑は眉を寄せると、転がっている不良達に目もくれず俺の腕を掴んで教室から出る。
 その途中、足元から「ぐえっ」と蛙が潰れたような声がした気がしたが……ま、気にしない。

「亮佑」
「どうせ風紀を呼んだだろ?アイツ等に任せておこうぜ」

 授業の事が気に掛かったが、腕を引かれながら大人しくついていく。人目が無い方へと進んでいくのは、目立つのがそう好きではない俺達の暗黙のルールだ。
 しばらく歩くと、今はもう使われていない古典準備室に着いた。あたりを見回して誰もいない事を確認してから、生徒会専用のカードキーを通して中へと入る。
 仕事が増えてからあまり来なかったこの場所は、俺が生徒会に入ってからは自由に使わせて貰っている部屋だった。亮佑は定位置の窓際へ、俺はビーズクッションを置いたソファーへと座る。

「……二人つーのも久しぶりだなぁ」
「何でか知らないが器物破損の事後処理が多くてな……。なかなか、時間を自由に使えなかったんだ」

 次から次へと運ばれてくる書類に、思わずシュレッダーに突っ込みたくなったくらいだ。副会長や書記が頑張ってるなか、会長がそんな事をしたら……もう、笑うしかないだろうな。

「……チッ、あいつのせいか」
「あ?」
「ああ、なんでもねぇよ」

 思わず意識を生徒会室にある書類に飛ばしていれば、不機嫌そうに顔を歪ませた亮佑が手を振った。
 何でもないと言うが、雰囲気が「俺は今、不機嫌です」と言っているぞ。

「……俺の事より、お前だろうが。疲れてんだろ?何授業に出ようとしてんだ」
「勉強は学生の本分だからな。それに、そろそろ出席日数も危ねーし」
「……生徒会には免除があんだろぉが」
「まぁな」

 でも使わないにこしたことはない。そういうと呆れたようにため息を疲れた。

「まぁ、そういうとこは昔から変わらねぇよな」
「亮佑もな。お前も変わってない」
「そうかよ」

 亮佑は肩を竦めると、窓から背を離してゆっくりとこっちに近付いてきた。それをぼんやりと眺めていれば、クッションを退かして俺の隣に座った。

「亮佑?」
「おう、おやすみ」
「は?な、うわっ!?」

 がし、と頭を掴まれたと思ったらそのまま気付けば亮佑の膝の上。慌て退こうとするが頭を押さえられたままで、動けない。
 これじゃあこの間の日比谷みたいじゃないかと焦るが、当の亮佑は平然とした顔で俺を見ている。

「りょ、すけっ」
「おーやーすーみって言ってんだろ。んな隈作りやがって……大人しく寝ろ」

 強く頭を撫でられ、仕方なくおとなしく膝を貸してもらう。この部屋が人が来ない場所で良かったと思う半分、この間膝を貸してやった日比谷はこんな感じだったのかと目を瞑る。頭の下にある少し硬い感触と人肌に疲れて固まっていた体が、徐々に弛緩していく。不良の格好が似合う幼なじみは、いつまで経っても世話好きだ。
 睡魔に意識を落としながら、ぼんやりと思った。


end

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